没後110年菱田春草展 後期展示がはじまりました!

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飯田市美術博物館で10月9日よりはじまった、没後110年特別展「菱田春草 ―故郷につどう珠玉の名画-」

10月24日(日) をもって前期の展示が終了しました!

 

あっという間の二週間。たくさんの方にお越しいただき大盛況の前期でした。普段画集でみるあの作品たちがみんな並んでいる…!というような、春草の名画が故郷につどった展示でした。

特に、前期のみ展示の重要文化財《黒き猫》は、ご来飯が53年ぶりということで、「楽しみにしていた!」「みることができてよかった!」と多くの方からうれしいお声をいただきました。

 

さて、本日10月26日より、後期の展示が始まりました!

春草の珠玉の名画勢ぞろい、というテーマはそのままに、13作品を入れ替え、展示室の雰囲気はがらっとかわりました。

そして後期の裏テーマはずばり「古典引用」!よりディープに春草を知ることができる展示です!

 

明治日本画の革新者である春草の制作方針は、思想家 岡倉天心の言葉から影響を受けています。

「先づ日本美術の歴史的根拠を牢くし、さて後西洋美術の精華をも参酌せしめんと欲する也」

日本美術の古典をよく研究し、そこから学んだうえで、西洋美術の良い部分を取り込んでいく。そうして新しい日本美術、日本画をつくっていく… 春草の作品はどれも新しい挑戦が込められていますが、そのベースには常に日本美術の古典引用があったのです。
名品の背景にある古典引用と新たな挑戦は一体どんなところなのか。じっくりご覧になって考えてみたり、ヒントが欲しいときはキャプションをお読みになったりして、春草のあくなき探求心、制作の意図を、感じていただけたら幸いです。

学生時代から最晩年まで、代表的な作品を網羅し、春草の制作の変遷をたどることができる特別展。この機会にぜひご覧下さい!


(ここだけの話、《黒き猫》がおやすみになった後期、いまのところ前期よりかなりすいています。春草の作品をじっくりたっぷりご覧になるチャンスですよ!)
※混み合うことが予想される団体来館の時間はこちらのリンクからご確認ください。
 菱田春草展■学校観覧などで混み合う日時の情報

 

(美術部門:加納向日葵)

 

 

菱田春草《雨中美人》(未完成)が飯田市有形文化財に指定されました!

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令和3年9月17日、飯田市に新たな有形文化財が登録されました!

飯田出身の日本画家、菱田春草の未完成作品《雨中美人》です。

 
菱田春草《雨中美人》(未完成) 明治43年

 

和傘をさした女性たちが、談笑をしながらゆっくり歩みをすすめている様子が描かれています。ほとんどがまだ下書きの状態で、一部着彩を進めたところでとまっています。

この屏風は、明治43年、第4回文部省美術展覧会(文展)に出品するために制作をはじめました。
前年度の第3回文展の際に、《落葉》を出品し、世間から高く評価された春草は、さらに新しい日本画の表現を目指してこの屏風作品に挑戦しました。暑い夏の日に妻の千代にモデルとなってもらいながら、様々なポーズと角度で和傘をさした女性のスケッチや小下絵を描き、時間をかけて準備しました。そして満を持して本制作に取り掛かったのですが、着物の色が思ったようにいかず、中断してしまいました。
しかし文展には何か作品をださなければならない、提出期限も迫っている、そんな時に、これまでの研究や経験を注ぎ込んで集大成のように描いたのが《黒き猫》でした。

《雨中美人》の過程があったからこそ、《黒き猫》にたどり着いた、という点でもとても意味のある作品ではありますが、《雨中美人》の素晴らしさはそれだけではありません。
未完成ながら、展覧会出品をめざして春草が描いていたこと、制作の過程が明らかなこと、晩年の春草が目指していた新しい日本画の姿を推測できるとても貴重な作品です。

また、日常の幸せな一場面をきりとったことや、女性らしい朗らかさやしなやかさを表現していること、顔が見えているのは一人だけでも女性たちの立ち姿から楽しく談笑している姿を想像できるその表現力、そして人物の配置や和傘の丸などの幾何学的な構図の面白さや新しさ…
挙げるときりがないほど魅力が詰まっている作品です!

《雨中美人》は、令和3年10月9日から開催の没後110年特別展「菱田春草 -故郷につどう珠玉の名画-」に展示予定です。

春草の制作への熱量や繊細な筆づかいを感じたり、
完成していたら着彩は、背景は、雨の表現は、そして日本画の現在は、どうなっていたのだろう…?と想像をしてみたりしながら、ご覧ください。

 

(美術部門 加納向日葵)

9月9日は重陽の節句です❁

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9月9日は五節句のひとつ、重陽の節句です。菊の節句とも呼ばれ、無病息災や長寿を願う日です。菊は古くから邪気を払い長寿の効能があると信じられていました。

春草の作品にも、菊にまつわるものがあります!


菱田春草《菊慈童》
明治33年 飯田市美術博物館蔵

当館所蔵の長野県宝《菊慈童》です。長寿のおめでたい画題として知られている菊慈童を、山の深さや時間の流れを感じる景色にぽつんとひとり配する構図から、春草が独自の視点で物語をとらえて描いたことがわかります。

この作品では、輪郭に線を使わず、色を重ねたりぼかしたりすることで空気を描く、当時の日本画において革新的な描き方を用いました。「朦朧体」と批判をうけますが、山の奥深さや神秘的な空気を描くことには成功しています。

 

10月の特別展で展示予定なので、ぜひご覧ください。
菊に無病息災と長寿の願いをこめて、穏やかな一日をおすごしください。

 

(美術部門 加納向日葵)

春草展特集が[広報いいだ]に掲載されました!

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長野県飯田市の広報誌、「広報いいだ」の2021年9月1日号の特集ページに、10月の特別展の特集記事を掲載していただきました!

 

表紙には、今回展のメインビジュアルをつとめて下さっている、重要文化財《黒き猫》が。

広報いいだの本号では、重要文化財《黒き猫》の誕生秘話を紹介しています!《黒き猫》が完成するのには、飯田市美術博物館が所蔵している未完成作品たちが大きなカギを握っていたとか…!?

 

さらに、春草と故郷飯田の関わりのエピソードや、春草が生きた時代を感じることができる飯田丘の上春草探訪MAPなど、飯田ならではの視点で春草にせまっています。

特集のページ以外にも、「菱田春草没後110年特別展 関連事業」として様々な行事が紹介されています。

ぜひご覧ください!

 

広報いいだweb book版
https://www.city.iida.lg.jp/book/list/book515.html

 

(美術部門 加納向日葵)

【予告】菱田春草の特別展を開催します!

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本日、美術博物館のホームページにて、今年の秋に開催予定の特別展

【没後110年特別展 菱田春草 -故郷につどう珠玉の名画-】

の情報を公開しました!

令和3年(2021年)は、飯田出身の日本画家 菱田春草(1874~1911)の没後110年という節目の年にあたります。

故郷にある飯田市美術博物館では、これを記念した特別展を開催します。春草の名画が日本各地から集まる、美博開館以来最大規模の特別な春草展となる予定です。

詳細はホームページの[開催中の展示と予告のご案内]をご覧ください。

 

また、9月は春草と縁の深い月です。9月中、展覧会の情報と合わせて、春草のことを今よりちょっと知ることができるような話を、時々ご紹介します。

 

(美術部門 加納向日葵)

 

 

たのしい工作?

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今月6日土曜日からはじまるトピック展示「耿之介と三島由紀夫、岸田國士」の展示作業をしました。

この展示、本当は先月8日から始まる予定だったのですが、長期閉館を余儀なくされたこともあり、1か月遅れのスタートということになりました。

久しぶりに展示室に籠り、ちまちまと孤独に展示物を並べる作業をしていたわけですが、カラダを動かして何かモノを作り上げていく作業というのは楽しいですね。

今日は、いらなくなったキャプションの切れ端で、書物を見せるための演示具も作成。

書物を展示するための自作の演示具
書物を展示するための自作の演示具

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真に写っている書物は、昭和13年に刊行された『院曲サロメ』という限定150部しか作られなかった稀覯本で、本書は著者のみが所有する番外本。ぼくのキライなヘビの皮を表紙に張り付けたシロモノなのですが、中身は19世紀末のイギリスの画家O・ビアズレイの挿絵が印象的で、できれば書物の中身と表紙を同時に見られるようにしたいな、とにわかに思い立って手元にある材料を使って工作を始めた次第。

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こんな地味な作業に没頭しているとき、「学芸員って(自分にとって)天職なんじゃないか?」と思ったりするわけです。

織田顕行(人文担当)

【自然】自然展示室のパネル、リニューアル中!

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昨年7月にリニューアルオープンした自然展示室(常設展示)ですが、燻蒸作業の臨時休館を利用して、パネルの修復を行っています。

このパネルは昨年のリニューアル時、原図が失われていて新しくすることがかなわなかったのですが、自然分野にフォトショップ手練れのスタッフが加わったことで、スキャニングして修復することが可能になりました。

現在、退色した色の復元や、研究の進歩によって変わった年代などの修正を行っています。

6月6日の開館に間に合うよう、急ピッチで作業中です。
新しくなったパネルをぜひ見に来ていただき、どこが変わったか確かめてみてください。

四方圭一郎(生物担当)

 

 

【人文】この展示はムズカシイ?

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来月13日からはじまる展覧会の準備をしております。

特別陳列「日夏耿之介とともにめぐる飯田の町」という展覧会です。

この期に及んで展示物がなかなか決まらず、ときどき収蔵庫で腕組みしながら唸っております。

書物と違い、展覧会はいくらシナリオが立派でもそれに見合った展示物が並ばなければツマラナイもの。その逆も然り(名品展は別かな?)。

さて、今度の展覧会は展示物もシナリオもマニアック。世界中のビブリオフィリア(書物崇拝狂)のうち5~6人が泣いて喜ぶようなディープな展示にしたいと担当者的には思ったりもするわけですが、そうは問屋が卸さんでしょうな。

そんなことを考えながら、期日までになんとか展覧会を作り上げねば、と日々悩んでおります。

(人文担当 織田顕行)

マニアには垂涎モノの稀覯本
マニアには垂涎モノの稀覯本

 

 

 

【人文・自然】遠山郷で勉強会

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当館には、付属施設が5館あります。

そのうちのひとつ、遠山郷土館で職員向けの勉強会するため、美術博物館から1時間以上クルマを走らせて遠山郷へ行ってきました。

臨時休館を利用して、新人さんたちに展示解説や遠山の自然について学んでもらうためです。

再開を目指して鋭意準備を進めています。

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今日はせっかく新緑の遠山郷に行ったはずなのに、外の景色を撮影するのを忘れてしまいました。

これではどこで勉強会をやったのか伝わらないですねえ。

ごめんなさい。

(織田顕行 人文部門)

 

 

【人文】学芸日誌2

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展覧会の中身を想像してみる

 臨時休館が続く混乱のなか、今度はちゃんと陽の目をみる日が来るのだろうか。

そんな一抹の不安を抱えつつ次の展覧会の準備をしています。

さて、飯田というところは伝統的に研究者を数多く輩出しているようですが、今度の展示ではそのうちのひとり日夏耿之介(ひなつこうのすけ)を取り上げます。

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くわしくは説明しませんが、ことし没後50年で静かなブームになっている三島由紀夫や、澁澤龍彦らに大きな影響を与えた人物でもあります。

担当者の机の脇に積み上げられた書物から、どんな展覧会になるのか想像できますか?

織田顕行(人文担当)