企画展準備日誌 その25  あとは開館を待つのみ!

ブログ 今日の美博

企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

 

展示準備すべて終了しました。
こんなに早くに企画展の準備が終わるのは、学芸員人生29年目にして初めてのことです。
展示室へ入るところを動画にしてみました↓
入口動画

 

今回の企画展で作ったリーフレットは、「キタダケヨトウ手帖」と「タカネマンテマ手帖」の2種類です。
南アルプスの高山蛾と高山植物を、マニアックに紹介しています!
展示室内で配布していますので、欲しい方はぜひ企画展にお出かけください!!

四方圭一郎

企画展準備日誌 その24  展示室の入口完成!

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

 

展示室の入口が完成しました。
苔むした亜高山帯の森を抜けて、展示室へお入りください!

 

 

2017年の企画展のときに作成した等身大パネルが発掘されましたので、高山蛾コーナーのスミにこそっとおいてみました。
眼の前に飛来しているのは、ホッキョクモンヤガとアルプスヤガです。

【今日の展示室】
展示物がすべて並び、ほぼ完成しました!
明日、リーフレットが納品されれば準備終了です!

四方

 

企画展準備日誌 その23  ニホンジカ

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

南アルプスの特に亜高山のお花畑は、ニホンジカによる食害の影響でムザンな状況になっています。

そんな高山帯の環境変化も紹介しているのですが、ニホンジカを悪者にしてみんなに嫌ってもらうのが本望ではありません。

現状を知ってもらい、多くの人たちに南アルプスのこと、わたしたちの暮らす伊那谷の未来を考えてもらえる機会になればと思っています。

シカのツノって硬いんだ! ゴツゴツしてるんだ!
メスはツノがないんだ! 毎年生え変わるんだ!

なんてことを、実際に骨やツノにさわって感じてもらいたいと思っています。

オスジカの頭骨の下の台に張った、メスジカの顔の写真がなんとなく悲しそう 笑

【今日の展示室】
展示室の照明の調整をしました。
キャプションを作成しました。

完成が見えてきました。

四方

企画展準備日誌 その22  体験コーナー

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

今回の展覧会には、3つの体験コーナーがあります。

・調査の荷物30kgを背負ってみよう
・ニホンジカのツノにさわってみよう
・南アルプスの絶景をバックに写真を撮ろう

高山蛾調査を始めた2016年には発電機など30kgを背負って登りましたが、もうダメです。
2022年は25kgでへばりましたので、最近は23kgくらいに収まるように軽量化を図っています。

さいわい近年バッテリーの高性能化などで、ライトトラップ道具が飛躍的に軽くなりました。
減らせないのは、人間の燃料「アルコール」ですね 笑

【今日の展示室】
さわれるコーナーに、ニホンジカのツノ(頭骨つき)を設置しました。
パネルの打ち出しはすべて終わって、明日壁面は完成するはずです。

企画展準備日誌 その21 博物学漫画チラ見せ

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

 

今回の展示は、テーマが博物学ということで、どうしても堅苦しい感じの解説パネルが多くなってしまいました。
来館者にすこしでも興味を持ってもらえるようにと、スタッフのひとりが漫画を描いてくれました。

 

展示室には5つの漫画パネルが設置してあります。
南アルプス博物学の描き下ろし漫画が読めるのは、美博の展示室だけです!

ぜひ観にきてくださいね!!

【今日の展示室】
背負ってみよう! のコーナーに30kgのザックを設置しました。
ライチョウTV準備中。

四方

企画展準備日誌 その20 解説パネル設置などなど

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)


大型プリンターで打ち出したパネルを裏打ちして、今日は展示室に掲示しました。
資料も少し搬入し、だいぶ展示室らしくなってきました。


展示室の正面には幅4mの大型スクリーンを設置し、南アルプスの風景が次々と映し出されます。
南アの四季の写真をお楽しみいただけます。


展示室を出たところのロビーには、記念撮影コーナーを設置しました。
初夏の南アルプスの山頂に立った感じの、「ばえる」写真が写せます!

というわけで、展示準備は6月7日のオープンに向け、いよいよ最終盤へと向かいます。

(四方圭一郎)

企画展準備日誌 その19 パネル打ち出し

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

企画展スタートまであと1週間。
日夜、展示パネルの作成と打ち出し、裏打ち作業に追われています。

パネルづくりが終われば、次は資料を並べてキャプションを整えていきます。

 

展示室内も少しずつですが、完成に向けて前進しています。

【今日の展示室】
博物史のコーナーのパネルは、8割がた完成しました。
白黒写真が多いのでかなり渋めです。

四方圭一郎

 

企画展準備日誌 その18 亜高山帯の針葉樹林

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

南アルプスのイメージと言えば、広大な亜高山性針葉樹の森ではないでしょうか?
北アルプスと違って、歩いても 歩いても視界がひらけず、苔むした森の急登がいつまでも続くあの感じです。

今回の展示では、亜高山帯の森林を抜けて高山へ至る感じを出したい思い、入口付近は亜高山性針葉樹林イメージでデザインしています。

こんな感じです↓

霧のまくシラビソとトウヒの森。
林床にはフジノマンネングサやイワダレゴケがみっちりと生えています。

オープンまでに、もう少し改造します。
お楽しみに!

【今日の展示室】
A0サイズのパネル12枚を設置したら、ぐっと展示室らしくなってきました。

四方圭一郎

企画展準備日誌 その17 キタダケヨトウ

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

キタダケヨトウは、1959年に南アルプスの最高峰北岳で、高山蛾の第一人者 神保一義さんによって初めて採集され、その後1968年に3個体目が採集されて以降、まったく見つかっていない幻の高山蛾でした。
飯田市美術博物館の南アルプス調査では、この蛾の再発見が大きな目標のひとつでした。

世の中がコロナ禍で右往左往していた2021年7月。
季節はずれの台風とコロナの影響で調査日程が変更になり、美術博物館のチームは調査に参加できませんでした。

その時に、なんと 53年ぶりにキタダケヨトウ↓が採れてしまったのです! 


採集したのは蛾類学会の金子岳夫さん。その第一報を聞いたときは、再発見された嬉しさより、自分自身の手で採れなかった悔しさが勝って膝が震えたのを思い出します。

新たに得られた個体の斑紋やオスの交尾器を詳しく調べたところ、ヨーロッパの個体群と一定の差異があり、akaishialpinaという名前をつけて、蛾類学会会長の枝恵太郎さんと共著で新亜種として記載しました。

2021年以降も、南アルプスでの高山蛾調査は継続しています。
キタダケヨトウの最新情報は、ぜひ展示室でお確かめください!

【今日の展示室】
記念写真撮影コーナーの撮影台を設置しました。
A0サイズの写真のパネル張りが終わりました。明日展示室に設置予定です。

四方圭一郎

企画展準備日誌 その16 タカネマンテマその2

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企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)


▲タカネマンテマの花

昨日の日誌で、南アルプス塩見岳で岡田邦松によって採集されたタカネマンテマが、牧野富太郎によりMelandrium apetalum (L.) Fenzl f. okadae Makinoの名で記載されたことを紹介しました。

最新のシノニミックリストでは、上記のとおりokadaeになっているのですが、古い文献をみるとokadaiと記されているものがあります。

そこで、牧野自身がどのような名前で記載したかを調べてみました。

Makino T.,1918. A contribution to the knowledge of the flora of Japan. Journal of Japanese Botany 2:5-8. 

これを見ると牧野富太郎はokadaiという品種名を付けているのがわかります。
ではなぜokadaiokadaeに変化したのでしょうか?

昆虫など動物では、男性の人名を種小名に付ける場合、語尾にiを付けます。
もしかして動物と植物でルールが違うのでは?と思い調べてみましたら、正解でした!

植物では、「人名の語尾がaの場合は、iではなくeをつけてaeとする」そうです。
ですので、牧野のつけたokadaiは、後人によってokadaeに訂正されたものと考えられます。

牧野の記載論文をみてもう一つ面白いことに気が付きました。
岡田邦松が採取した標本のデータは、「Mt. Shiomi (Kunimatsu Okada!  July 28, 1914)」と記されています。
この時の様子を記した河野齢蔵の記録では7月26日、前澤政雄の記録では7月28日で、どちらが正しいのか判断がつかなかったのですが、牧野のデータと前澤の記録が合致することから、1914年7月28日が正しいと思われます。

些細なことでも調べていくと、いろいろ面白いことがわかってきますね。
しかし、重箱の隅を突くようなことばかりしていると、肝心の展示が出来上がりません。
スタートまでとうとう2週間を切ってしまいました。がんばらねば。

【今日の展示室】
昨日と変化なしです。
A0サイズのパネルを13枚打ち出しました。写真をデカく打ち出すとなかなか迫力があります。

四方圭一郎