【春草展示第38期】ミニ解説③《白き猫》

10月8日から、菱田春草記念室 第38期 故郷の足跡-春草と飯田-を開催しています。展示中の作品から1点ご紹介します。


菱田春草《白き猫》
明治34年(1901)
春草会蔵 飯田市美術博物館寄託

明治34年9月に春草が飯田へ帰省した際、母校である飯田学校の同窓生から依頼を受けて制作した作品です。帰京後に着手し、10月に飯田学校同窓会へおくられています。その後飯田の「春草会」へ寄贈され、現在は同会より当館へ寄託となっています。

猫は春草が多く描いた画題のひとつです。本作は春草の猫の中でも、特に威厳のある表情をしています。頭と尾に黒班を持つ白猫は、伝徽宗《猫図》を参照しているでしょう。春草は明治29年に《猫図》の模写をおこなったと言われており、その際に接した作品が持つ気品を、彼なりに再現したものが《白き猫》と考えられます。
朦朧体の画風を用いながら色彩を明瞭化し、写実性を重視する院体花鳥画の様式や、琳派の技法を取り入れて描いています。常に新しい表現を目指して挑戦を込めた作品を描く、春草の制作姿勢が伝わります。

菱田春草記念室 常設展示 第38期 故郷の足跡-春草と飯田-は11月6日まで。故郷飯田ならではの展示を通して、春草の横顔を感じていただけましたら幸いです。

(菱田春草記念室担当)

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