【春草展示第39期】ミニ解説④《夕の森》

11月12日から、菱田春草記念室 第39期 西洋美術との出会い-春草の海外遊学-を開催しています。展示中の作品から1点ご紹介します。


菱田春草《夕の森》
飯田市美術博物館蔵

アメリカ滞在中の春草は、ターナーやホイッスラー、印象派、バルビゾン派など多様な西洋美術の風景画に接する機会を得ました。これらを参照しながら、光を意識した自然景を多く手掛けています。

同心円状に配された鴉の群れは、岡倉天心旧蔵で現在はボストン美術館所蔵の《寒林帰鴉図団扇》に類似する表現がみられ、これを典拠としたと考えられます。アメリカで春草と横山大観が展覧会をした際には、岡倉天心は春草のことを「後期の宋、および足利時代の芸術家たちに深く傾倒している」作家として紹介しています。この時期の春草は、朦朧体の表現を主軸に、宋代の院体画や漢画系の作風、即ち古画を典拠としつつ、西洋美術の風景画から技術、色彩や光の表現を学んでいきました。こうして、叙情性を示す新たな日本画の風景画の姿を模索していきました。

菱田春草記念室 常設展示 第39期 西洋美術との出会い-春草と海外遊学-は12月11日まで。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

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