【春草展示第36期】ミニ解説①《林和靖放鶴図》

7月30日から、菱田春草記念室 第36期展示 彩の魅力-春草の色彩表現-がはじまりました!展示作品から1点紹介します。


菱田春草《林和靖放鶴図》
明治33年(1900) 飯田市美術博物館蔵

林和靖(りんなせい)は北宋期の詩人で、生涯を通じて仕官せず、西湖のほとり孤山のふもとに庵を設け世間と離れて暮らしていました。梅を植えて鶴を飼って愛でていたことから、「梅妻鶴子」とも称されます。春草は、林和靖の清高な生涯に心を寄せたらしく、同画題の作品を幾つも手掛けています。本作の、画面右下に林和靖、左上方に一羽の鶴を配した対角線の構図は、南宋院体、画特に伝 徽宗《秋冬景山水図》(金地院蔵)の秋幅から影響を受けているでしょう。
明治30年代前半の春草は、墨の輪郭線を排し、色を塗り重ねぼかして描く空間表現に取り組みます。しかし混濁した色彩となり、批評界からは酷評を受けます。本作と同じ年に描いた《菊慈童》に対する批評では、象徴的な「朦朧体」の言葉も出てきました。

菱田春草記念室 常設展示 第36期 彩の魅力-春草の色彩表現-は8月28日まで。春草の色の探求をぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

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