【春草展示第34期】ミニ解説③クローズアップ!《鎌倉時代闘牛の図》

菱田春草記念室 第34期展示

美術学校での学び-春草の基礎学習-

より、簡単に展示内容をご紹介しています。

ミニ解説①では、美術学校に入るまで を、

ミニ解説②では、 美術学校の3つの基礎学習をご紹介しました。

今回は本展示から、春草が東京美術学校在学4年目に描いた《鎌倉時代闘牛の図》を、作品の注目ポイントや春草の基礎学習の成果を探る形でご紹介します!


菱田春草《鎌倉時代闘牛の図》明治27年4月 飯田市有形文化財

 

①豊かな表情
都路で突然始まった牛のぶつかり合い。驚く人、賑やかす人、嫌がる人、怖がる動物も…
感情や声まで想像できる、それぞれの豊かな表情に注目してご覧ください。どんな声や音が聞こえてきますか?

②こだわりの線描
牛の描き方に注目。抑揚のある線で、力強い体の様子を描いています。
人物の着物は…ハリのある着物は硬いまっすぐな線でパキパキっと、着慣れた様子の着物は曲線で、質感を描き分けています。

③絵巻物からの学び
春草は「臨画」で古画模写を通して伝統と筆法を学びましたが(ミニ解説②参照)、古画からの学びは春草の生涯を通して制作の軸となります。本作を描くときには、「鳥獣人物戯画」の乙巻や、「一遍上人絵詞伝」など絵巻物を参照したと考えられます。
特に、「一遍上人絵詞伝」は模写が複数残っており、特に人物表現、表情や装束に注目して描いています。鎌倉期の特徴ある装束は、《鎌倉時代闘牛の図》にそっくりな姿で引用されています。

当館学芸員 小島の論文にて詳細をご覧いただけます▶︎資料紹介 菱田春草《鎌倉時代闘牛の図》と一遍上人絵詞伝模写

④西洋美術の技術を取り入れた空間
手前側を濃い色で、奥を薄い色で描く空気遠近法を取り入れています。
また、画面の左上のモヤ〜ホワ〜とした表現で、奥にも空間が広がっていることを描いています。このように、西洋美術の空間・遠近の表現を取り入れています。

⑤新しい日本画の姿
①〜③は言い換えれば古画からの学び、④は西洋美術の技術。日本の伝統や筆法を学ぶ「臨画」の学びと、西洋の写実・空間表現の学び「写生」をもとに、独自の制作を進めていく「新按」らしい作品で、これこそが美術学校が目指していた「新しい日本画」と言えるでしょう。着実に学び、意欲的な新按の制作を行っていた春草だからこそ描くことができた作品です。

⑥兄へ贈った受賞作
この作品は、東京美術学校の校友会臨時大会に出品し、約260点中2位の成績を受けました。現存する中では最初の受賞作品です。
春草の兄・為吉は、春草が画家の道に進むことを応援し、東京で暮らす間は春草の生活の面倒を見ていました。為吉が熊本へ赴任中は、春草は度々書簡を通して、学校での出来事や制作の構想などを伝えています。
明治27年6月8日付の為吉宛 春草書簡では、岡倉天心から受けた指導、自身の卒業制作への意気込みなどを語った後に「賞の画(牛の画)」を贈ります、という内容が書かれています。良き理解者である兄へ、受賞作を贈ることで学びの成果や感謝の気持ちを伝えたかったのかもしれませんね。
本作は長く菱田家の所蔵にあり、平成30年から当館の所蔵に、そして飯田市有形文化財に指定されています。

 

菱田春草記念室 常設展示 第34期 美術学校での学び-春草の基礎学習-は5月29日まで。画家・春草の始まりをぜひご覧ください。

(美術部門:加納向日葵)

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