菱田春草《雨中美人》(未完成)が飯田市有形文化財に指定されました!
令和3年9月17日、飯田市に新たな有形文化財が登録されました。飯田出身の日本画家、菱田春草の未完成作品《雨中美人》です。
和傘をさした女性たちが、談笑をしながらゆっくり歩みをすすめている様子が描かれています。ほとんどがまだ下書きの状態で、一部着彩を進めたところでとまっています。
この屏風は、明治43年、第4回文部省美術展覧会(文展)に出品するために制作をはじめました。
前年度の第3回文展の際に、《落葉》を出品し、世間から高く評価された春草は、さらに新しい日本画の表現を目指してこの屏風作品に挑戦しました。暑い夏の日に妻の千代にモデルとなってもらいながら、様々なポーズと角度で和傘をさした女性のスケッチや小下絵を描き、時間をかけて準備しました。そして満を持して本制作に取り掛かったのですが、着物の色が思ったようにいかず、中断してしまいました。
しかし提出期限が迫る中、何かしゅっぴんしなければと、これまでの研究や経験を注ぎ込んで集大成のように描いたのが名画《黒き猫》でした。
《雨中美人》は、令和3年10月9日から開催の没後110年特別展「菱田春草 -故郷につどう珠玉の名画-」に展示予定です。晩年の春草の挑戦と生の筆遣いを感じられる、未完成の大作をぜひご覧ください。
(菱田春草記念室担当)
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