【美術】幻になるかもしれない展示 内容紹介2

s-棚田泰生《潜像》展示風景
長野県の緊急事態宣言が解除され、ようやく光明が見えはじめました。しかし絶対的なコロナウィルス制圧に成功したわけでもなく油断は禁物です。引き続き日常生活の衛生に注意を払っていきたいものです。

さて、幻になるかもしれない展示として、館蔵品によるコレクション展示「新時代の造形3-昭和・平成世代の日本画」について取り上げましたが、21日の木曜日から美術博物館を開館することになりました。展示とプラネタリウムについては人数制限や衛生管理を行って公開をします。ただ、講座や講演会についてはもう少し先延ばしになりそうです。
さて、今日は棚田泰生の作品についてご紹介します。棚田泰生は下市田の出身の日本画家です。少年期に事故に遭い背骨を傷めて後遺症が残ってしまい、進学を断念して日本画家の道を歩みました。東京へ出て画を描きはじめますが、太平洋戦争の戦況が悪化して一旦帰郷します。戦後、飯田を訪れた日展作家の中村正義の影響を受け、新しい時代の日本画を模索していきました。

s-棚田泰生《街はずれ》
今回は二点の作品を対面に配置して展示しています。一点は第3回創造美術展に初入選した《街はずれ》です。泰生のデビュー作ともいえる作品で新しい造形へ向かおうとする初々しさを感じさせます。

s-棚田泰生《潜像》
もう1点は日展で初めて特選となった《潜像》です。《街はずれ》の対面の奥まった壁面に1点だけ飾っています。空間に入るとあざやかな黄色の色彩が目に飛び込んできます。アイヌの民俗衣装を纏った男性の姿を中心に、背景には植物を装飾的描いています。独特の雰囲気を持った人物を正面から見せる構図に強さを感じます。中村正義の元でともに学んだ大森運夫と北海道へ取材旅行を行い、その成果が現れた作品です。

槇村洋介(美術担当)

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