【美術】幻になるかもしれない展示 内容紹介1

s-滝沢具幸《レクイエム》展示風景

この度の新型コロナウィルスにともなう休館の影響で、一度も開室できずに終了してしまいそうな展示があります。館蔵品によるコレクション展示「新時代の造形3-昭和・平成世代の日本画」です。

この展示では、地域出身の日本画作家である棚田泰生、仲村進、滝沢具幸の3人を取り上げました。出品作品は5点と非常に少ないのですが、それぞれの作品と1対1で向き合えるように配置しています。館蔵品ならではの少し実験的な意図を持った展示です。

会期は、5月24日(日)までなので、それまでに開館する可能性も残していますが、幻に終わってしまうかもしれず、せめてWeb上で作品をご紹介したいと思います。

まず展示室に入ると滝沢具幸《レクイエム》が目に入ります。この空間では正面にこの1点だけの展示です。人物を構成的に描いた日本画で、茶色を主体にして横たわる人物群、立っている(座っている人もいる)人物群がモチーフの主体です。上方の背景には白や箔により山岳のような形が描かれています。

s-滝沢具幸《レクイエム》部分2 s-滝沢具幸《レクイエム》部分1

この作品が描かれる前、大きな出来事がありました。作家の友人が突然倒れられたそうです。場所は山梨県の清里でした。作家が駆けつけてみると人工呼吸が施されている状態で、残念ながら帰らぬ人となられたようです。その時、清里の空にはなぜか多くのヘリコプターが飛び回っていました。実は日航機が御巣鷹山付近に墜落した日で、現場へ往来するヘリコプターだったようです。

作品の題名の《レクイエム》は鎮魂歌の意味、友人と航空機事故の犠牲者が重なっているのでしょう。背景の山のように見える三角形は天上に誘われる光のようなイメージでもあるようです。

槇村洋介(美術担当)

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