霊昭女

制作年: 明治35年(1901)

材質: 絹本著色

法量: 119.3 × 49.0cm

備考: 飯田市有形文化財

霊昭女「霊昭女」とは、中国唐代の龐居士の娘のことで、竹籠を売って両親に孝養を尽くしたと言われる人物である。古くより禅宗の画題として用いられ、図像としては少女が竹籠を下げた礼拝像風に描かれることが多い。

本図は背景を一切省き、霊昭女のみを対象とした画面構成とされており、崇高な印象を感じさせる作品である。画風は没線主彩によるものであるが、霞をもちいて空間を造成してゆく方向ではなく、澄んだ色彩を用いた主彩画的なものとなり、初期の朦朧体より明瞭な画面とされている。

なお、本図は明治35年4月に行われた第16回絵画互評会に、課題「端妍」(容姿が整って美しいの意)に対して寄せられた作品である。この前月に春草は、第12回日本絵画協会・第7回日本美術院連合絵画共進会において〈王昭君〉を出品し、銀牌第1席を手にしているが、本図〈霊昭女〉も色面の捉え方、人物の装いなど、〈王昭君〉と多くの共通点が確認できる。