秋渓

制作年: 明治33年(1900)

材質: 絹本著色

法量: 107.5×50.2cm

秋渓紅葉に彩られた深山の渓流と、そこに佇む三羽の鳩とを描く。本図も〈菊慈童〉〈林和靖放鶴図〉と同様に、没線主彩の絵画技法、いわゆる「朦朧体」の手法によって制作されている。ここでは背景の紅葉の部分にその効果が用いられており、手前の紅葉は明瞭に、後方のそれはボンヤリと描かれることによって、紅葉林の奥行きと湿潤な空間とが現されている。

この「朦朧体」の技法は、初期の日本美術院に参集した作家たちに取り入れられていったが、特性として色彩が混ざり合うことによる明度の低下という弊害が多く見られた。しかし本図の場合は強いて指摘するほどの混濁は見られない仕上がりとなっている。