林和靖放鶴図

制作年: 明治33年(1900) 

材質: 絹本著色

法量: 111.0× 50.5cm

林和靖放鶴図林和靖とは北宋期の詩人で、西湖のほとりに隠棲し、20年間世間に交えず風流三昧の生活を送った人物である。古来より画題として好まれ、鶴を飼い慣らしたことから「撫鶴図」「放鶴図」が、また梅を愛したことから「愛梅図」が多く描かれている。

本図は鶴を放つ場面を描くもので、霞に煙る江上に放った鶴を眺める様子を、輪郭線を大幅に省いた没線主彩の画風によって描かれている。この画風は空刷毛という手法を用いて色彩をかすませてゆき、そこに描き出される霞を利用して、画面内に空間性と光の効果とをもたらせようとしたものであった。しかし色をぼかしてゆくことによって成立するこの技法は、色彩が混濁し易い傾向がみられた。そのために世評から「朦朧体」と酷評を受けることになる。