伊那谷自然史論集 vol.2

規格: A4判 モノクロ

ページ: 72ページ

定価: 割引価格420円 →100円

発行日: 2001年1月31日

発行元: 飯田市美術博物館

伊那谷自然史論集 vol.2 目次

■論文・報告(本文リンク)

■観察記録ノート(本文リンク)

■論文要旨

■伊那山脈西面に於ける線状構造-喬木村くるみ沢断層- 久保田賀津男  本文PDF(753KB)
The lineament in the west side of the Ina Mountains-The fault in Kurumi-zawa in the village of Takagi- Kazuo KUBOTA
伊那山脈の西面では、稜線にほぼ並行して谷と尾根が配列される「線状構造」がみられる。特に喬木村・豊丘村・松川町生田の三地域で著しく、この地形に従って峠道が拓かれていた。本調査は、線状構造の主成因を断層と仮定し、その一端をくるみ沢に求めたものである。
 
キーワード:伊那山脈、線状構造、断層、くるみ沢
 
 
■中部地方領家帯、下条村小松原で見いだされた閃亜鉛鉱を含む変成岩 手塚恒人  本文PDF(119KB)
Ryoke Metamorphic rock bearing sphalerite in Shimojomura-Komatsubara, central Japan Tsuneto TEZUKA
中部地方領家帯、天竜峡南西の下条村小松原で閃亜鉛鉱を含む変成岩が見いだされた。伊那山脈~天竜峡地域で閃亜鉛鉱を含む領家変成岩が見つかったのは、豊丘村野田平、豊丘村長沢についで3例目である。ここでは、産状と化学分析資料を中心に簡単な報告をする。
 
キーワード:領家変成岩、閃亜鉛鉱、下条村、化学分析
 
 
■飯田旧市内の御岳第1テフラをのせる地形面構成層の露頭について 小泉明裕  本文PDF(525KB)
Some terrace deposits covered by On-Pm1 tephra at Iida City, central Japan Akihiro KOIZUMI
飯田旧市内南東部に見られた風成の御岳第1テフラを堆積物直上にのせる2ヶ所の露頭観察の概要を述べる。
 
キーワード:御岳第1テフラ、露頭記録、飯田市立病院面、飯田旧市内
 
 
■南アルプス仙丈ヶ岳平右衛門谷流域の林冠欠如部の変遷 大澤太郎  本文PDF(428KB)
Change of forest gap in heiemon-tanibasin, Mt.Senjo,suthern japanese alps Taro Osawa
亜高山帯針葉樹林を中心とする亜高山植生が流域単位で残されている、南アルプス仙丈ヶ岳の平右衛門谷流域を対象に、災害史を調べ、1964~1990年の26年間の林冠欠如部の変遷について調査を行い、林冠欠如部の特性、森林の回帰年について考察を行った。平右衛門谷流域において、およそ20年周期で大災害が発生していることが推察された。また、本流域においてギャップ、大面積一斉破壊,斜面崩壊,土石流の4つの更新要因が定義され,それぞれが災害に応じて新規発生し,時間の経過で縮小・拡大し,植生回復することが示された。26年間の変遷から年間の林冠欠如部の新規発生面積は0.8haで、本流域の森林の回帰年は189.5年と推定された。
 
キーワード:仙丈ヶ岳、流域、林冠欠如部、更新要因、回帰年
 
 
■長野県下伊那地方における哺乳類の記録 菅原 寛  本文PDF(154KB)
Some records of Mammals in the southern part of Nagano prefecture Hiroshi SUGAWARA
下伊那地方における哺乳類の分布調査を1996年4月から行っている。ここでは2000年10月までの記録をまとめた。結果、6目13科19種が確認された。
 
キーワード:下伊那地方、哺乳類、記録、分布
 
 
■伊那谷のカヤネズミの分布と繁殖 吉田保晴  本文PDF(836KB)
Distribution and Breeding behavior of the harvest mouse (Micromys minutus) in Ina Valley, Nagano Prefecture Yashuharu YOSHIDA
中川村の天竜川河川敷で、カヤネズミの生息を新たに1ヶ所確認した。従来の報告と筆者の未公表データーを加えると、伊那谷におけるカヤネズミの生息場所は16ヶ所になった。確認されたカヤネズミの生息地を地図上に落とした結果、カヤネズミは主に天竜川の河川敷に生息し、一部は河川から離れた山間地にも生息していることがわかった。営巣植物はクサヨシ・オギ・ススキ・イネ・トウモロコシなどであった。中川村の渡場と飯沼で、オギ・ススキ・ツルヨシなどが分布する天竜川河川敷の高茎草地に調査地を設けた。そして、カヤネズミの巣の確認と同時に繁殖行動を調べた。その結果、調査地内において実際に営巣している場所は調査地内の1%程の面積しかなかった。1999年と2000年の調査では、巣作りは8月中旬~11月中旬まで行われ、子育ては9月中旬~10月中旬まで行われた。また巣を採取して調べた結果、内層を含むものと含まないものとに分けられ、前者は繁殖用の巣として利用されていた。さらに、内層のある巣を調べた結果、その重量に差があることがわかり、巣の利用時間の違いによることが考えられた。今回の調査結果と調査中に生息地が破壊された事件から、生息環境の保護についても提言した。
 
キーワード:カヤネズミ、伊那谷、巣作り、繁殖、保護
 
 
■上伊那郷土館所蔵蝶類標本目録-『上伊那昆虫調査書』のために昭和初年に採集された標本を中心とする- 小野 章  本文PDF(904KB)
A list of butteerfries in the possession of KAMIINA LOCAL MUSEUM-collected in the early Shouwa Era- Akira ONO
上伊那郷土館に所蔵されている昭和初年に収集され、『上伊那昆虫調査書』の基礎となった蝶類標本の採集記録付きの目録を作成した。9科112種がリストアップされたが、この中には、長野県唯一の記録であるカバマダラ(偶産種)および、オオウラギンヒョウモン・ヒョウモンモドキの現在では絶滅したと考えられる2種の標本が含まれている。また、チャマダラセセリ、ツマグロキチョウ、ジャコウアゲハ、など絶滅が危惧されたり、上伊那では記録の少ない種の標本も入っている。
 
キーワード:上伊那郷土館、蝶類標本目録、カバマダラ、オオウラギンヒョウモン、ヒョウモンモドキ
 
 
■長野県とその周辺のヤトセスジジョウカイ-形態的特徴と生息環境について- 雛倉正人   本文PDF(794KB)
Morphology and habitats of Athemus yato (Takahashi) (Coleoptera,Cantharidae) in Nagano Prefecture and its adjacent regions Masato Hinakura
ヤトセスジジョウカイの分布について、長野県および愛知県で調査を行った。その結果、平地の湿地に分布の中心を持つ本種が、1000m以上の高標高地にまで生息していることがわかった。また、中部地方には、黒化の著しい特有の色彩型が広く産することが明らかになった。さらに長野県とその周辺には、好湿地性の近似種が分布し、本種との混棲も確認された。本種の生息状況を早期に知ることは、近似種との相互関係や、湿地環境の保全を考えるうえでも重要である。
 
キーワード:ヤトセスジジョウカイ、長野県、湿地環境、分布、変異
 
 
■伊那谷におけるアオスジアゲハの分布 井原道夫  本文PDF(315KB)
Records of Graphium sarpedon nippnum Fruhstorter (Lepidoptera, Papilionidae) in the southern part of Nagano prefecture Michio IHARA
伊那谷南部域におけるアオスジアゲハの分布についてまとめた。その結果、連続した発生は天龍村のみで確認されたが、飯田市や豊丘村では一時的な発生がみられ、飯田市では野外での越冬も確認された。
 
キーワード:アオスジアゲハ、伊那谷南部、分布、発生
 
 
■長野県南箕輪村信州大学農学部キャンパスで採集した蛾類 四方圭一郎  本文PDF(378KB)
List of the Moths collected in the Campus of Shinshu Univercity in the Sousan part of Nagano prefecture Keiichiro SHIKATA
孤立した平地林を含む上伊那郡南箕輪村信州大学農学部キャンパス内で、1994年、1995年の2年間にわたり蛾類の採集をおこなった。その結果18科221種の蛾類を記録した。
 
キーワード:蛾類、信州大学農学部、平地林、孤立林、伊那谷