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戦後に子ども時代をおくった男児の多くは西部劇映画に憧れた。桜井秀もその一人だ。写真家になった桜井は広告写真の撮影で出会った俳優チャールズ・ブロンソンにアメリカ西部への憧れが再燃する。以来20年にわたっりアメリカの西部を撮り続け、写真集『アメリカ・ウエスト』を上梓する。その第二弾として「ルート66」の撮影にかかる。ルート66はかつての幹線道路としてシカゴとサンタモニカを結ぶ。今は国道40号にその役をゆずり廃線となったが、ところどころに往時の面影を残している。そのよき時代を追い、ノスタルジックな道としてまとめている。桜井は近代文明の先端をゆくアメリカをあえてモノクロームのトーンに置きかえ表現している。氏のモノクローム表現は磨きすました日本刀の如く無駄のない鋭さでアメリカの現在が観る者に迫ってくる。氏のモノクロームプリントの技術は、VIVDの助手時代に東松照明や奈良原一高、細江英公氏等に指導を受けた最高のものである。この二つの作品にはアメリカで受けた氏の感動があますことなく表現されており、その洗練された作品は藤本四八写真文化賞に値する。

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