東京都在住の秦氏は、故郷の祭りである「遠山の霜月祭」に16年間も通って、写真を撮り続けている。タイトルの「あらびるでな」は、遠山谷の方言で、祭りの際、「暴れるからな」と注意を呼びかける言葉だそうだが、応募した作品からは、カメラで祭りに参加した作者の興奮と歓喜が伝わってくる。
環境・文化」が公募テーマである藤本四八賞には、祭りを取材した作品の応募が多いが、ほとんどの作品はややもすれば視覚的に派手な現象だけを追った、奥行きのない作品になりがちである。しかし、秦氏の作品は、故郷の祭りというテーマに真摯に向かい合い、格闘し、湧きだしてくる感動をダイナミックにとらえたところに一日の長があった。生まれ育った故郷への思いが作品に結実している。