旧飯田藩士 柳田家書籍類 709点

柳田家は飯田藩主堀侯に仕えた譜代家系の臣である。寛文12年(1672)に堀侯が野州烏山より飯田への移封に従属し、以来江戸詰めであったが、安政6年(1859)に飯田に帰され、明治9年(1876)に再び上京した。日本民俗学の創始者柳田国男(旧姓松岡)は柳田家に養嗣子に入り、11代となった。

柳田家には多量の文書類が残され、それら1713点(前号『文書目録』Ⅶ参照)は本館に寄託されている。今回、掲載する書籍類709点は平成7年、柳田家のご厚意により本館へ寄贈されたものである。

一瞥すると、大部分が文学に類するものである。大別すると中国文学と日本文学になるが、峻別は難しい。

中国文学では詩文の参考書として清の康熙帝の命により編纂された『佩文韻府』(106巻)と『韻府拾遺』(106巻)が圧巻である。ついで漢詩の入門書として流布された『唐詩選』、唐宋時代の著名な文章家の手になる『唐宋八大家文格』がある。さらに、先秦以来、宋までの詩文を集めた『文真宝』もある。また、儒学の解明に『論語註䟽』・『大学』・『中庸』・『孝経』等があり、教育書として名高い『蒙求』もある。

歴史書としては史実に詳しい『春秋左氏伝』、三皇・五帝から元までの興亡を記した『玉堂鋼鑑』があり、元・明史については『元明史畧』がある。歴史小説では『演義三国誌』があり、明代の長編小説で和解による『演義忠義水滸伝』が読みやすくなっている。

日本文学では『古今和歌うひまなひ』をはじめ短歌に関するものが多く、謡曲本に至っては8頁余を割いている。随筆としては『方丈記』『徒然草参考』等もある。江戸中期の風俗を記したものに『江戸繁盛記』があり、史書としては『大鏡』・『増鑑』・『栄華物語』・『勢免天話』等がある。

総じてこれら書籍類は欠落が少なく、保存状態も良好で、丁寧に取り扱われていたことが偲ばれる。