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■ローウェンター博物館−地域の博物学の拠点−■


■お城を改造した旧館

■景観に配慮した博物館

■機能的な展示ケースに驚く

■広い空間に配置された展示

■機能的で安全な作業空間

■お城を改造した旧館
 
 ツアー最後の日は午前が自然史博物館で午後が自動車博物館だ。専用バスで自然史博物館のある町の中心へと向かう。ガイドのまちがいで、城を改造したという旧館の方へ行ってしまった。せっかくなので館内の展示を見学することにする。
 ここは主に生物の展示場だ。昆虫からクジラにいたるまで生きものがきれいに展示してある。面白いと思ったのは、昆虫や貝形虫などの小さな生きものは、拡大した模型が添えられていて、たとえば噛む・吸う・なめるなどのさまざまな口の機能が紹介してある。分類した標本だけでなく、ジオラマもたくさんあるので見ていて楽しい。
▲豪華な旧館の入口
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■景観に配慮した博物館

 短時間で見学をすませ、新館の方へ移動する。新館も旧館と動物園を含めた大きな公園の中にある。新館の近くにモノレールが設置してあった。これはガイドによると、昨年国際造園博覧会を開いたときに産業界の方でつくったものだという。ところが景観を悪くしている声が広がり、ついに撤去せざるを得なくなったらしい。まだ引き取り先がないため、ビニールを被ったモノレールが宙にういているわけだ。
 新館は一見平屋のようになっていて、周りの森よりも背が低い。建物で景観を壊さないようにしているようだ。中に入ると広々したロビーの中央に受付がある。ここでガイドブックを購入して案内者から施設の概要を聞き、展示と裏方を見学することになった。案内者は琥珀の研究者だ。

▲高さを押さえた新館
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■機能的な展示ケースに驚く

 このローウェンター博物館はバーデンベルク州の州立自然史博物館だ。ドイツには各州に1〜2つの州立自然史博物館があるから、全部でこのクラスの博物館が20くらいはあるという。日本でいえば県立になるのかもしれないが、規模はかなり大きい。この博物館はバーデンベルク地域に産するジュラ紀を中心にした中・古生界の化石とアルプスのモラッセなどに含まれる新生代の化石を中心としている。
 活動としては特別展示の他に生徒・教師に対する普及活動、ワークシートをつかった学習、子ども向けの工作教室などを開催しているという。年間の入館者は約22万人、その内17%が学校の生徒であって残りが一般の家族らしい。ここでも研究担当、教育担当、技術部門などがあって、それぞれの専門家が事業を能率的に進めている。技術の方が展示ケースの正面ガラスを開けてくれたが、大きな一枚ガラスが簡単にしかもスムーズに開くので驚いてしまう。展示替えが容易で、しかもつくりがしっかりしている。業者主導の日本では考えられない。

▲ガラス扉が見事に開く
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■広い空間に配置された展示

 展示は1階と地下の2フロアーあるが、吹き抜けの部分が半分くらいを占めている。やはりホルツマーデン産の巨大な魚竜やウミユリなどは、恐竜とともに吹き抜け部分に展示してあった。
 小さな階段を上ると琥珀の展示場があった。日本を含めて世界の琥珀が展示してある。ジュラシックパークで有名となった虫入り琥珀もたくさんあり、一つ一つをていねいに紹介してくれる。

▲展示風景
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■機能的で安全な作業空間

 次に標本作業室、収蔵庫などの裏方を見学する。収蔵庫はたいへん広く、資料によって部屋が分けられている。ホルツマーデンの化石の収蔵庫は大きな化石が多いせいか広々としている。現在ホルツマーデンは保護区になっていて、かってに採掘できないらしい。そこで採掘権をもっている会社から優先的に購入しているという。収蔵庫の一角には登録作業をするスペースとなっていて、盛んに資料が集まっていることが分かる。
 標本作業室はたいへん機能的にできている。たとえば搬入口−廊下−複数の作業室へと天井にレールがついているので、チェーンブロックで重い標本をどこへでも運び入れることができる。標本作業室は木工・金工、石工、レプリカ作成、レプリカ復元、保存用マウントなどそれぞれ部屋が分かれていて、専用のりっぱな機械が入っている。とくに石工室の岩石カッターは、石材屋がつかうような巨大なものだ。この日はレプリカ作成室で恐竜の復元模型の型をつくっていた。
 最後に案内者の琥珀研究室を見学した。琥珀の加工機械がずらりと並んでいるが、ぜんぜん埃っぽくない。ヨーロッパ全体にそうだが、健康を守るため排気システムがきちんとしている。安全性においても博物館の活動全般においても、ヨーロッパはまだまだ日本のはるか先をいっていると実感した。

▲廊下をはしる天上レール
▲琥珀の研究室
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