■ゾルンホーフェンの化石
内部は薄暗い。最初の部屋には印刷機などが並んでいた。石材がリトグラフとして古くから利用されていたらしい。次に進むと昔の石切り場を再現した小さな展示室があって、その奥に化石を展示した大きな部屋があった。
ずらりと保存の良い化石が並ぶ。図鑑などで見たことのある化石もいくつかあった。有名なのは、カブトガニがぐるぐる回っている這跡とその終点でのカブトガニ本体の化石。これは何かの本で“死の軌跡”として紹介してあった標本だ。他にもエビ・カニなどの甲殻類や昆虫類の化石はすばらしく保存がいい。岩石が白っぽいので見やすいのかもしれない。海生爬虫類や魚類の化石も所せましと並んでいる。一番奥に翼竜と始祖鳥が展示してあった。翼竜は驚くほど保存がよい。骨格全体はぺしゃんことなっているが、ひとつひとつの骨はつぶれず立体的に良く残り、関節もよくわかる。50〜60cmとそれほど大きくないが、圧倒される。
始祖鳥は、ベルリン大学所蔵の標本と大英博物館所蔵の標本が有名だが、ここにはそれらのレプリカが展示してあった。これらはたしかにここから産したものなのだ。もう一体保存のいい標本のレプリカがあった。これは近くの自然史博物館に収蔵されているらしい。さらにやや表面が茶色に風化し、頭部付近が見にくくなっている標本がある。これがこの博物館のオリジナル標本だった。全体の見栄えは他の3点よりかなり劣るが、羽毛の印象はよく残っている。骨の保存もすばらしい。しかし始祖鳥産地の博物館としては、この標本だけではすこしものたりない気がする。でも考えてみると、ここは会社立の企業博物館だし、どうも研究者がいない。だから研究上貴重な標本というものは、大学や国立クラスの博物館に購入されて行くしかないのだろう。
始祖鳥以外はすべてオリジナルで、石切り場から産したすばらしい標本が分類群ごと並んでいる。しかし残念なのは、照明がよくないことだ。太陽の光が窓から入り、ガラスへの写り込みが著しい。資料がいいだけに、展示法をもっと工夫してほしかった。
博物館や工場のある建物の周りは、かつての石切り場のようだ。層理面に沿って板のように割れる泥質石灰岩をみんなで割ってみたが、そうたやすく化石が見つかるはずはない。それでも手ごろな大きさの岩石をサンプリングして、記念に持ち帰ることにした。もしかしたら、微化石が含まれているかも知れない。 |
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▲魚類の展示コーナー |
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▲始祖鳥の展示コーナー |
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▲工場内の露頭 |
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