▲目次へもどる
■ゾルンホーフェン博物館−始祖鳥のふるさと−■


■ミュンヘンからゾルンホーフェンへ

■石材会社の中にある博物館

■ゾルンホーフェンの化石

■ミュンヘンからゾルンホーフェンへ

 この日の午後は、玄武洞ミュージアムの田中さんに誘われてゾルンホーフェン博物館へ行くことになった。他に北九州自然史博の高尾さん、ココロの松岡さん、成富さんの計5人で、ミュンヘンの空港から別行動をとることにする。
 空港からタクシーに乗って、ミュンヘンの中央駅へ行くことにする。時刻表によれば、1時間ほどでニュルンベルグ方面行きの鉄道がある。途中のトゥルチリンゲンで降りて、再びタクシーでゾルンホーフェン博物館へ行けばいいはずだ。
 タクシーでアウトバーンをとばし、1時間弱で中央駅に着いた。切符を買う時間がないので、そのまま目的の鉄道に乗ることにする。ドイツの鉄道はコンパートメント方式となっていて、まん中でなく一方の窓側に通路がある。6人用のコンパートメントはなかなか空いているところがない。多くが1〜2人で占められている。通路を移動しながら探すと、やっと見つかった。扉をあけて5人で占有する。通路側には窓があるが、仕切られているのでプライベートな空間になっている。これならそのまま寝台車にもなりそうだ。
  途中検札で回ってきた車掌さんから5人まとめて往復切符を購入した。140kmを1時間強で移動するわけだが、日本に比べると非常に安いような気がした。
 途中、ゾルンホーフェンの町を通過し、ツゥルチンゲンに着く。小さな町だが、駅前にタクシーが1台とまっていて助かった。無理をいって、5人乗せてもらう。憧れのゾルンホーフェン博物館がもうすぐだ。

▲ドイツの国鉄
▲ゾルンホーフェン博物館
▲戻る
▼次へ

■石材会社の中にある博物館

 ゾルンホーフェン博物館は石材会社が所有する私立の小さな博物館だ。この石切り場から今までに4体?の始祖鳥が見つかっている。最近始祖鳥は鳥の直接の先祖ではないということが分かってきたが、それでも羽毛跡のついた標本は一見の価値があるはずだ。
 博物館は石材工場の敷地内にあった。しかし、入口がしまっていて、内部も暗い。勇んで来たが、なんと休館日のようだ。タクシーの運転手に入口のプレートを見てもらうが、休館ではないから大丈夫だという。しかし、鍵がかかっていて入ることができない。工場は動いているようだが、あたりには人けがない。違う建物の中に事務所があった。そこの所長らしき人に皆でお願いすると、鍵を管理するおばさんを呼んでくれた。ありがたい。皆で礼をいって、見学させてもらう。

▲石材工場
▲戻る
▼次へ

■ゾルンホーフェンの化石

 内部は薄暗い。最初の部屋には印刷機などが並んでいた。石材がリトグラフとして古くから利用されていたらしい。次に進むと昔の石切り場を再現した小さな展示室があって、その奥に化石を展示した大きな部屋があった。
 ずらりと保存の良い化石が並ぶ。図鑑などで見たことのある化石もいくつかあった。有名なのは、カブトガニがぐるぐる回っている這跡とその終点でのカブトガニ本体の化石。これは何かの本で“死の軌跡”として紹介してあった標本だ。他にもエビ・カニなどの甲殻類や昆虫類の化石はすばらしく保存がいい。岩石が白っぽいので見やすいのかもしれない。海生爬虫類や魚類の化石も所せましと並んでいる。一番奥に翼竜と始祖鳥が展示してあった。翼竜は驚くほど保存がよい。骨格全体はぺしゃんことなっているが、ひとつひとつの骨はつぶれず立体的に良く残り、関節もよくわかる。50〜60cmとそれほど大きくないが、圧倒される。
 始祖鳥は、ベルリン大学所蔵の標本と大英博物館所蔵の標本が有名だが、ここにはそれらのレプリカが展示してあった。これらはたしかにここから産したものなのだ。もう一体保存のいい標本のレプリカがあった。これは近くの自然史博物館に収蔵されているらしい。さらにやや表面が茶色に風化し、頭部付近が見にくくなっている標本がある。これがこの博物館のオリジナル標本だった。全体の見栄えは他の3点よりかなり劣るが、羽毛の印象はよく残っている。骨の保存もすばらしい。しかし始祖鳥産地の博物館としては、この標本だけではすこしものたりない気がする。でも考えてみると、ここは会社立の企業博物館だし、どうも研究者がいない。だから研究上貴重な標本というものは、大学や国立クラスの博物館に購入されて行くしかないのだろう。
 始祖鳥以外はすべてオリジナルで、石切り場から産したすばらしい標本が分類群ごと並んでいる。しかし残念なのは、照明がよくないことだ。太陽の光が窓から入り、ガラスへの写り込みが著しい。資料がいいだけに、展示法をもっと工夫してほしかった。
 博物館や工場のある建物の周りは、かつての石切り場のようだ。層理面に沿って板のように割れる泥質石灰岩をみんなで割ってみたが、そうたやすく化石が見つかるはずはない。それでも手ごろな大きさの岩石をサンプリングして、記念に持ち帰ることにした。もしかしたら、微化石が含まれているかも知れない。

▲魚類の展示コーナー
▲始祖鳥の展示コーナー
▲工場内の露頭
▲目次へもどる