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■ジュネーブ自然史博物館−規格化された展示−■ | |||||
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ジュネーブは知名度の割には人口が少なく、16万5千人。それでもスイス第三の都市だ。スイス第一はチューリヒ、第二はバーゼル、そしてスイスの首都ベルンが第四の都市だ。日本以上に山国であるスイスにとって、16万人というと大都市に入るのだろう。 |
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ジュネーブ自然史博物館は市立でありながら、コレクションも豊富で規模が大きな博物館だ。18世紀後半以後、多くの研究者からの寄付によって資料が蓄積され、1872年に大学で公開された。その後、この資料を受け継いで、1965年に現在の博物館が設置された。資料の寄付も多いが、篤志家の寄付金も多いらしい。年間の運営費は1200万フラン(約9億6千万円)、職員は70人。そのうち研究者が25人で、試料作成・クリーニング・登録などに関わる技術者が25人いる。技術者は半分が化石、1/4が動物、1/4が植物部門に属している。この数字を見るだけで、博物館の研究・収集・整理などの基本的な活動が重視されていることがよく分かる。その他にデザイナー・木工・金工・印刷を担当する技術者も6人いるという。自前で資料を収集・蓄積し、それらを自前でデザインして展示してしまうというわけだ。ジオラマもパネルもすべて自作、展示ケースも自作、とにかく徹底している。 |
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1階の展示はスイスの動物の分類展示。分類展示といっても生態を考慮して展示してあることが多い。鳥類などでは幅2〜5mほどの展示ケース内に、ある環境に住む分類群−例えば森林の鳥−を集めて、簡略化した生態的地位に剥製を展示するという手法だ。ジオラマもあるが、日本のように複数の動物群を一つのジオラマの中に展示するのでなく、一種類もしくは一つの分類群のみを選択して環境の中に展示している。つまり、一つの動物群がどのような環境に生息しているのかということにのみ焦点をあてているため、非常にすっきりとした分かりやすい展示だ。さらに、全ての展示に言えることだが、文字が非常に少なく、背景も簡略化した美しいデザインであることだ。こういった展示がユニット化され規格化された展示ケース内にきれいに納まっているため、整然とした印象を受ける。 |
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1階の入口にコウモリの保護を主張した展示があり、展示室の奥にもコウモリの詳しい分類展示があった。案内者に聞いてみると、コウモリはこの博物館でよく研究されていて、館内にコウモリの学会の事務局があるという。研究の成果が展示に生かされているよい例だ。アルプスは石灰岩が広く分布しているので、コウモリの生息する洞窟が多いのだろう。
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4階は地球の歴史のコーナーで、宇宙の始まりから現在までを時間軸にそって展示している。1階と同じように規格化された展示ケースの中に、それぞれの時代を要領よくまとめて展示してあった。資料は汎世界的ではあるが、白亜紀やジュラ紀などを複数のユニットにするなど地域的な資料を充実させてある。展示は実物資料が中心で、解説パネルはやはり少ない。
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次に図書室や作業室などの裏方を見て回った。図書室は広い。1200の雑誌、40000冊の図書があるという。収蔵庫も電動で動く棚が数え切れないほどある。一般に収蔵庫の一角には必ず登録コーナーがある。ここでは動物と化石のそれぞれの収蔵庫の窓際がすべて登録作業スペースあるいは研究スペースに割り当てられていた。それぞれの部屋に2〜3人が登録作業・研究していた。作業室は剥製、金工、木工、印刷と4つの部屋に分かれている。剥製と金工の部屋は主に剥製や骨格などの展示資料を制作するところだ。木工の部屋は展示台や展示ケースなどを制作・修理するところで、広くて工場並の機械が並んでいる。印刷の部屋は巨大なカラー印刷する機械が入っていて、さすが印刷技術の国と感心した。印刷を除けばそれぞれの部屋で3〜4人ほどの技術者が作業をしていて、これらの施設をフルに活用していることが分かる。
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