■混在岩と枕状溶岩
南赤石幹線林道は中川根町の上長尾から尾根に登り、蕎麦粒山の東を巻いて、さらに北へ黒法師岳まで伸びている。林道沿いには良い露頭がつづいている。
大札山と蕎麦粒山との中間地点の鞍部まで砂岩のレンズを含む泥質岩が分布している。もともと泥岩や砂岩泥岩互層だったのが、プレートの沈み込みの過程で混在岩となったものだ。一見無秩序のようにみえるが、沈み込みの方向を示す非対称変形構造がときどき観察できる。
鞍部の少し手前には、枕状溶岩が露出している。枕状溶岩は水中で固まった玄武岩質の溶岩で、枕を積み重ねたような形態をもっている岩石だ。現在は弱い変成をうけて緑色岩になっている。ここの枕状溶岩は枕の形態がよく残っていて、垂れ下がりから上位がどちらなのか判断できる。
枕状溶岩の上位には珪質泥岩があり、シルト岩から砂岩泥岩互層へと変化していく。これは、枕状溶岩をのせた海洋プレートが時間とともにしだいに陸側に近づいてきたことを示している。
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▲林道沿いに露出する枕状溶岩 |
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■大地の力を受けて曲がった地層
鞍部から先は、酸性凝灰岩を含む層状泥岩ときれいに整層した砂岩泥岩互層が分布している。しかし、地層はほとんど垂直に立っていて、上位側が北になったり南になったりしている。これは、地層が圧縮されてアコーデオンのように折り畳まれているからだ。林道沿いに露頭を注意深く見ていくと、ときどき褶曲の軸部が観察できる。地層がきれいに折れ曲がっている褶曲から、大地の力を感じてみよう。
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▲折り畳まれた砂泥互層の褶曲 |
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■海溝に堆積した混濁流堆積物(タービダイト)
砂岩と泥岩がセットになった地層をよくみると、粗粒な部分からしだいに細粒となって、泥岩となることに気づく。これは粒度のまざったものをかき混ぜると粗粒なものが最初に沈み、次第に細粒なものが上に堆積していくことと同じ原理だ。これを級化層理という。級化層理をもつ地層は、粗粒な粒子から細粒な粒子までが混ざった状態で海底に運ばれ、短時間に堆積したことを示している。
このような堆積物を混濁流堆積物(タービダイト)という。地震などで海底の斜面が崩れると、土砂を含んで密度の高くなった混濁流(海底土石流)が斜面を流れ下る。これが平坦なところに堆積したのが混濁流堆積物だ。厚さは数cmから数mまで幅広い。
地層の下部が粗粒なほどエネルギーが高く、海底を侵食する。そのため、粗粒な混濁流堆積物の下底には、侵食して削り取った凹みの雄型(ソールマーク)が残っていることが多い。これを流痕という。この付近には、流痕がよく残っているので、地層がどこから運ばれてきたのか推定することができる。
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▲地層の底についた巨大な流痕 |
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■蕎麦粒山と大札山
蕎麦粒山にのぼるには、山犬段から広葉樹とササ原の中につけられた遊歩道が一番簡単である。東面が刈り払われているため、山頂から富士山をみることができる。大札山はトイレと駐車場が整備された尾根からのぼる。山頂からは北〜東の展望がよい。
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▲展望のよい大札山山頂 |
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