先ず、この作品の特質しているところは、僧侶が僧侶の修行を撮影していることだ。一般人が見た修行中の僧とは違う視点から修行する僧の心境を表現している。
修行とは、悟りを求めて仏の教えを実践することという。
この物語は、修行に参加した僧の記念写真から始まる。面白いことに、参加している僧の顔にはそれぞれの思い、心構えが見えている。これは瞬間をとらえることのできる写真でなければ表現できない記憶であり記録である。そして修行が行われている情景へと進んでいく。
黒い背景を基調として、そこに浮かびあがる僧侶たちの無表情とも見える表情には、それぞれが思念するこころ、仏陀の姿、真理の探究する姿が写し出されている。そして、自分自身のこころと葛藤する修行僧の心理までを見事に表現している。
写真は、この宇宙で起こるあらゆるものを視覚で伝えるメディアとして発達したものだが、この僧貌は、一般人の知り得ない僧侶たちの修行の世界を私たちに伝える力作であり、公募藤本四八賞にふさわしい作品である。
選考委員 田沼武能
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