このフォトストーリーは、清内路村で出会った女性との交友関係の中で、その家族とのおついあいが始まる。そして村で毎年行われる花火の祭りの日に女性の家族の夕食に招かれる。女性の父は病んで臥せていた。そして、家族たちとの夕食会を談笑のうちにすごした。その後女性からその父の訃報を受ける。ストーリーは夕食に招かれた時に会った女性の父親との思い出を中心に組み立てている。山村の人びととの交流の中で、人間の絆、そして生きること、生命の原理をも写真と文章で語ろう試みている。
作者は「眩しい光」という言葉で文章をとじており、光にこだわりを持っているように思う。ストーリーの始まりも逆光線でまぶしい竹藪の画面からである。そして山村の暮らし、村祭りへと進んでゆく。村で出会った女性、花火などなど物語の構成もうまい。前途の如く光の扱いも上手で、美しい画面に仕上げている。
そんな力作なのになぜ文化賞にならなかったのかという疑問を抱く人がいると思う。審査員の間でも、そのことについて議論がかわされた。それは、前回文化賞を受賞した作者の父(南島孝さん)の作品の傾向に似ていることである。
もち論、山村をテーマに撮影すれば似るのは当然である。作者もそれを意識してか現代風にプリントの色調をとばしたりしているが、テーマそのものは違うとはいえ、山村を扱ったものであり、類似するものはやむをえないが、やはり作者の独自性がほしいということになった。すばらしい感性の持ち主なので、ぜひとも次回も頑張って写真文化賞にチャレンジして欲しいというのが審査員全員の意見であった。
選考委員 田沼武能
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