「青磁鯱耳付瓶」  南宋〜元時代(12世紀〜13世紀) 龍泉窯 高さ27.4p 口径10.0p 胴径11.7p
 中国南宋時代(1127〜1279)から元時代(1271〜1367)にかけて、浙江省南部の龍泉窯で焼造された青磁に、俗に砧青磁と呼ばれるものがある。これは、戦国時代の茶人、千利休が所有していた鯱耳付の青磁花生に割れがあり、鎹で留められていたところ、それを見てかえって響きがあると好み、砧の響きになぞらえて、砧青磁と呼ぶようになったとするものである。また一説では、銀閣寺に伝わった花生が絹を打つ砧の形に似ており、砧青磁と称するようになったともされる。
砧青磁は、利休伝説を呼ぶように特に日本人に好まれた青磁で、輸入を目しても焼かれ、鎌倉時代末の14世紀初めには、国内に数多く流入している。その特徴は、粉青色(不透明な薄い青色)の釉薬が厚くかかり無紋のものが多く、北宋の官窯の作例に比べて緩やかなフォルムを具えている。本作品は、この砧青磁にあたるものであるが、やや元時代の天龍寺青磁に近い発色を示すところから、南宋時代末から元時代にかけての焼造と考えられる。