佐竹蓬平 「柘榴小禽図」  天明3年(1783) 絹本著色 98.7×38.7p 軸装一幅
 伊那谷出身の作家で、いち早く長崎系花鳥画を描いたのは、佐竹蓬平(1750〜1807)である。その作風は、池大雅への傾倒による南画的な筆法によるものが主流をしめるが、早くには、南蘋風花鳥画で一派を築いた宋紫石の指導を受け、長崎派の画法を習得している。
 ここでは、樹木と小禽による福寿画題を、繁栄を示す柘榴、不朽を示す古石、不老を示す雁来紅(ハゲイトウ)に長寿を示す白頭翁(小禽)を配して描いている。本図が描かれた天明3年(1783)には、蓬平は長崎に歴遊している。その目的はやはり長崎派絵画の実見であったと考えられ、本図の存在はその動向を端的に示すものといえる。しかしながら、モチーフは南蘋的であるものの、筆法は南画の技法も交えて描き、江戸後期に交流した折衷様式を感じさせる作品でもある