鈴木芙蓉 「松下逍遙図」  寛政3年(1791) 絹本淡彩 106.8×48.7p 軸装一幅
 ほぼ同時期に江戸の地で活躍した谷文晁の、寛政文晁と呼ばれる作風をそのまま想起させるような山水図。芙蓉と文晁の関係は、同じ渡辺玄対に師事した間柄とされるが、それを裏付けるような作風の近似といえる。『古画備考』の文晁の項には、「(文晁は)其後又雲峯ヲ媒介トシテ、鈴木芙蓉ヲ師トシテ、山水ナドヲ学」と記述され、芙蓉が一時期文晁に画技を教えたともされる。芙蓉と文晁の寛政期の折衷画法は、玄対の折衷様式をさらに押し進めたものであった可能性が強い。本図における芙蓉の折衷画法の摂取は、玄対風を越えて厳粛ともいえる芙蓉風に展開し、技量的にもかなりの充実度を見せているといえる。本図のような画風が、やがて萌芽をみせる文晁の画風の濫觴となったことは、大いに想定できるだろう。