佐竹蓬平 「荘周胡蝶夢図」  享和元年(1801) 絹本淡彩 92.1×33.6p 軸装一幅
 中国戦国時代の思想家荘子の故事による画題で、『荘子』斉物論に載る「荘子が蝶となり百年を花上に遊んだことを夢に見て目覚めたところ、自分が蝶の夢を見ていたのか、あるいは蝶が今、夢を見ていて自分になっているのかわからなくなり疑った」という場面を描いている。
 岩に肘をかけてうとうとと眠る荘子を、蓬平独特の丸顔髭面の風貌をもって描き、頭上に蝶を遊ばせている。荘子の冠帽の房は風もなく浮き上がり、夢ともうつつともおぼつかない情景を引き出している。画面全体に漂う飄々とした作風は、物語の中で示されている万物斉同の理念への接近が見える。本画題を蓬平は好み、本作をはじめいくつかの優品を残している。