佐竹蓬平 「山水図」  享和元年〜文化4年(1801〜1807)頃 絹本淡彩 103.6×32.9p 軸装一幅
 安西雲烟の『近世逸人画史』の蓬平に関する記述に「山水尤も善く、人物之に次ぐ」と評されるように、遺された蓬平の作画においても、山水図の占める比率は大きい。特に、長崎歴遊を終えて、郷里に身を留めてからは、穏やかな作風の山水図を繰り返し描くことになる。それらは、ほとんどが特定の風景によらない胸中の山水図であるが、画中から感じられる風情は、柔和な伊那谷の自然景観が素地となっていることを連想させる。飄然とした晩年の作品であり、大づかみな筆法で物質の形態も曖昧になり、画作に万物の真象を求めた蓬平の自然観が現れている。