鈴木芙蓉 「海棠に小禽図」  寛政10年(1798) 絹本著色 34.5×56.5p 軸装一幅
 鈴木芙蓉の作風が、狩野派と明らかに異なるのは、雪舟以来の漢画系の筆法のみならず、新来の長崎派や南画を積極的に取得したことにある。特に長崎派は、宋紫石を中心に、黒川亀玉、北山寒巖、渡辺玄対など江戸南画初期作家の花鳥画の筆法に取り入れられ、続く文晁、芙蓉に至っても、花鳥画においては先世代を踏襲した長崎派の要素が色濃く顔を見せる。本図は、母親への孝徳を示す海棠に、綬帯鳥を配した典型的な長崎派花鳥画題を示す。長崎派花鳥画といえば、まず沈南蘋の作風を頭に描くが、本図では、濃密な南蘋風の描法はさけられており、むしろ没骨法の多用など、張秋谷あたりの作風に近づけようとする意図が見える。