佐竹蓬平 「伯牙弾琴図」  文化4年(1807) 絹本淡彩 129.1×38.0p 軸装一幅 代田保雄氏寄贈
 伯牙弾琴は、『列子』湯問や『呂氏春秋』に載る故事を題材にしている。物語は、春秋時代の琴の名手伯牙が、常より自らの琴の音色を理解できるのは、鐘子期だけであると心に思っていたところ、鐘子期が先に亡くなり、琴を聞かせる相手がなくなってしまったとして、自ら琴を壊し、以後再び弾くことがなかったという内容で、本図では、琴をつま弾く伯牙と、音色に聞き入っている鐘子期の姿を捉えている。
  道教や神仙思想を示す画題として、中国・日本でも古来より知られる画題で、「知音」という言葉は友人を持つこととして儒教的にも解釈された。蓬平は、この画題を好み、いくつかの作品を描いているが、本図では最晩年の境地らしく、独特の飄々とした人物像を簡素ながら墨勢を含んだ筆致で描いている。