岸駒 「蘭亭曲水図」  文政7年(1824) 絹本墨画淡彩 83.7×114.1p 軸装一幅
 蘭亭曲水は、中国東晋時代の永和9年(535)3月3日に、浙江省の蘭亭に王羲之が文士41人を集め修禊(みそぎ)を行った故事に由来するもので、曲折した流水に杯を流し自らの前を過ぎるうちに作詩をする趣向が催された。これを画題にした蘭亭曲水図は、高潔な文人の営みに憧れた南画の画題などに取り上げられた。
 南画・狩野派・四条派の折衷様式である岸派の創始者岸駒(1749・1756〜1838)による本図は、筆法としては南画様式に主だって描かれる。岸駒独特の戦筆様式の震えたような筆致で、細密な画面を描き切り独特な覇気を見せている。この躍動に傾斜した作風こそが岸駒独自の構想であり、一時期の京都画壇を席巻した画風であった。