竹内栖鳳 「柳鴬図・懶猫図・朝皃図・酸漿図」  明治37年(1904) 絹本淡彩ほか 各幅134.5×31.0p 軸装四幅対
 竹内栖鳳(1864〜1944)は、多くの画家のうちでも最も井村家と深い交流のあった人物で、毎年の年賀状をはじめ、多数の書簡が伝わっている。画の注文も頻繁に行われていたようで、往時には井村家の栖鳳コレクションは近隣にも知られた存在であった。本図は、「明治乙巳暮冬為信陽井村雅主清嘱栖鳳題簽」の箱書きを伴うもので、季節の風物を瀟洒に描き、本コレクションの栖鳳作品の中でも、優れた出来映えを見せるものである。
 箱書きは、明治38年。さらに箱中に明治39年付の栖鳳の筆料受取りの証が納められており、画が描かれて一年後に箱書き、二年後に支払いが行われたことが解る。この時間の隔たりは、恐らくその表装に時間を費やしたと思われ、これを想起させるものとして、本図の表具には栖鳳の印を織り込んだ特殊な裂が使用されている。
酸漿図
朝皃図
懶猫図
柳鴬図