梶田半古 「桜下美人図・月下美人図」  絹本著色 各幅109.5×41.8 軸装双幅
  井村コレクションが収集された時期は、飯田出身の菱田春草が活躍した当時であるのに関わらず、同コレクションの中には、日本美術院をはじめとする東都画壇の作品は少ない。飯田では春草生存中には、ほとんどその画を購入する者はなかったというが、風雅な京文化を嗜好した井村家にとっても、急進な美術院系の作品は、興味あるものとは映らなかったのであろうか。その中にあって、本作は、めずらしく東都画壇に属する作品である。
 梶田半古(1870〜1917)は菊池容斎の一門となる容斎派の作家で、春草等の美術院作家と比べて、急激な変革を推し進めた一派ではなかったが、西洋画法などに多くを取材し、新しい日本画の変革を担った作家のひとりであった。着物の織り柄まで繊細に神経を注いだその作品は、半古ならではの上品で風雅な美人像を作り上げている。
月下美人図
桜下美人図