白衣観音

制作年: 明治34年(1901) 

材質: 絹本墨画淡彩

法量: 29.9 × 22.5cm

備考: 岩崎新太郎コレクション

白衣観音〈白衣観音〉は、春草が明治34年9月に、大観と共に飯田へ帰省した際に描かれたものであり、当館の岩崎新太郎コレクションに含まれる作品である。岩崎新太郎は飯田の呉服商で、明治後期から大正期にかけて書画の収集をおこなっていた人物である。彼のコレクションは、当時活動していた同時代の作家を中心としている点に特色があり、この頃の飯田の収集家仲間には「新画家の岩崎」と呼ばれるほどであった。

岩崎家に残る伝承によれば、春草はこの帰省時に、作品を揮毫させてもらいたいと新太郎の許を訪れたという。新派系の画風を嫌っていた新太郎は春草の申し出を断ったが、春草が重ねて頼み込んだために、一点だけ制作を依頼して、本作が制作されたと伝えられている。実際に岩崎新太郎コレクションは京都系や旧派系の作家が中心で、新派系の作家が少なく、後に大家となった横山大観の作品などは一点も収録されていない。地方における作品収集の傾向を伝える逸話といえよう。