制作年: 明治44年(1911)

材質: 紙本金地著色

法量: 20.2 × 17.6cm

菊晩年における春草は、それまで続けられていた色彩への関心がさらに高まり、作品も微妙な濃淡による賦彩から、〈猫に烏〉や〈早春〉などにみられるような濃彩を主体にしたものへと変容してゆく。そして金地の背景による作品も描かれ、琳派的な様相を示した作風をみせるようになっている。

本図〈菊〉は、この晩年期における典型的な作例を示す。金地の上に菊が配され、その枝葉の部分には巧妙な塗り残しや、墨と濃緑によるたらし込みが用いられている。ここでは以前の春草にはみられなかった、かなり装飾的な作風を認めることができる。

しかし春草はこの新たな画風を展開することはかなわず、明治44年春に再び発病して視力を失い、同年9月に慢性腎不全によるうっ血性心不全でこの世を去った。