伊那谷自然史論集 vol.3

規格: A4判 モノクロ

ページ: 98ページ

定価: 割引価格490円 →100円

発行日: 2002年3月31日

発行元: 飯田市美術博物館

伊那谷自然史論集 vol.3 目次

■論文・報告(本文リンク)

■観察記録ノート(本文リンク)

  • 長野県豊丘村におけるアオスジアゲハの越冬の記録  本文PDF(147KB)
  • 長野県天龍村におけるクロツバメシジミの冬季の活動記録  本文PDF(149KB)
  • 長野県伊那市における秋期のアサギマダラ幼虫採集例  本文PDF(54KB)
  • 長野県飯田市でウシカメムシを採集  本文PDF(54KB)

■論文要旨

■南アルプス仙丈ヶ岳平右衛門谷流域の地形分類 大澤太郎  本文PDF(210KB)
Topographical classification in heiemon-tani basin, Mt. Senjo, southern japanise alps  Taro Osawa
亜高山帯針葉樹林を中心とする亜高山植生が流域単位で残されている、南アルプス仙丈ヶ岳の平右衛門谷流域を対象に、メッシュ法による地形分類を行った。平右衛門谷流域において、675個のメッシュを得て、クラスター分析により、14の地形類型に区分することができた。細かいところでは問題も残るが、大まかには実際の地形に対応した分類結果が得られた。
 
キーワード:仙丈ヶ岳、流域、地形分類、メッシュ法、クラスター分析
 
 
■伊那谷のテフラⅡ-露頭記載を中心に- 寺平 宏  本文PDF(2,294KB)
Tephra in Ina Valley Ⅱ – Some new records of outcrops – Hiroshi Teradaira
伊那谷自然史論集1(2000)の報告以後に観察されたテフラについて、露頭記録を中心に報告する。露頭は大鹿村大池・高森町千早原・中川村針ヶ平・中川村飯沼・飯島町本郷の5ヶ所である。
 
キーワード:伊那谷、テフラ、露頭記録、火山ガラス屈折率、地形面の対比
 
 
■伊那谷の中期更新世テフラ 竹下欣宏  本文PDF(969KB)
Middle Pleistocene tephra beds in the Ina Valley Yoshihiro Takeshita
伊那谷には、その層序、フィッショントラック年代から中部更新統と考えられるテフラが分布する。これらのテフラの全鉱物・重厚物組成およびテフラに含まれる輝石・角閃石の化学組成を測定し、その特徴を明らかにしたので報告する。また、これらのテフラのうち、数層は古期御岳火山灰起源である可能性が高い。
 
キーワード:伊那谷、中期更新世、テフラ、化学組成
 
 
■伊那層群の古地磁気極性 菅沼悠介  本文PDF(431KB)
Paleomagnetic polarity of the Ina Group Yusuke Suganuma
長野県南部伊那谷に分布する伊那層群について古地磁気学的研究を行い、得られた古地磁気極性から体積年代を推定した。伊那層群中の7層準から古地磁気測定用試料を採取し、全地点の試料に段階熱消磁実験を行った。この結果、下位より、6層準が逆帯磁を示し、最上位の1層準が正帯磁を示した。再下位層準の試料である喬木村富田の富田テフラが第三紀・第四紀境界層準の広域テフラである恵比寿峠-福田テフラに対比され、最上位層準の試料である久米テフラが更新世中期の広域テフラである樋脇テフラと対比されることから、逆帯磁を示す試料はマツヤマ逆クロンのオルドバイサブクロンより上位に、正帯磁を示す試料はブルーンクロンに堆積したと考えられる。
 
キーワード:伊那層群、堆積年代、古地磁気極性
 
 
■中部地方領家帯、伊那山脈西麓の加々須複合花崗岩体とその周辺の地質資料Ⅱ-新たな知見と今後の課題- 手塚恒人  本文PDF(1,451KB)
The data Ⅱ of the Kakasu granitic complex in the west of Ina mountains in the Ryoke metamorphic belt, central Japan Tsuneto Tezuka
中部地方領家帯、伊那山脈の加々須複合花崗岩体が変成岩と接する付近から、濃集する放射性鉱物が見つかった。EPMAによる定性で、ゼノタイム・ジルコン・モナザイトが見いだされたが、大部分がモナザイトであった。加々須複合花崗岩体を構成する花崗岩のメンバー(天竜峡花崗岩・上久堅花崗岩)内部には、放射性鉱物の濃集は見られない。このような産状は特異なケースと思われたので、記載を中心にしたまとめをし、合わせて新知見を整理し、今後の課題を明確にした。
 
キーワード:中部地方領家帯、加々須複合花崗岩体、天竜峡花崗岩、上久堅花崗岩、放射性鉱物、モナザイト
 
 
■飯田・下伊那の金属鉱山 今村理則  本文PDF(3,334KB)
Metallic Mines of the Iida and Shimoina Area Mitinori Imamura
現在、飯田・下伊那地域で稼働中の金属鉱山は一つもない。かっては20ヶ所にも及んだ鉱山または試掘の跡は土砂くずれや崩落で、その場所を特定しがたくなっている。時間の経過とともにその痕跡すら薄らいでいる。そうした跡を尋ねて確認しながら、可能なかぎり標本を採集してきた結果を報告する。
 
キーワード:飯田・下伊那、金属鉱山
 
 
■赤石山地南西部、池口川地域の四万十帯の地質と放散虫化石-微化石データベース構築にむけてⅦ- 村松 武  本文PDF(1,411KB)
Geology and Radiolarina fossils of the Shimanto Belt in the Ikeguchi-gawa area, southern Akaishi Mountains – for the construction of the microfossil database(Part Ⅶ) – Takeshi Muramatsu
遠山川支流の池口川地域には、主に四万十帯白亜系の白根層群が分布している。今回、調査地域の地質時代と地層区分に関する基礎データを得るために、地質調査と放散虫化石の抽出処理を行った。その結果、泥質岩・酸性凝灰岩・チャートなど総計91個の岩石サンプルのうち。35個の岩石サンプルから時代決定に有効な放散虫化石を見いだした。これらの放散虫化石にもとづくと、マトリックスを構成している岩石の時代は、前期白亜紀の後期から後期白亜紀にかけてであった。地質調査の結果とも合わせると、調査地域の白根層群は総体として北西から南東へ時代が若くなる帯状構造をしていることがわかった。この帯状構造は、北東方の遠山川本谷地域で明らかになった構造(村松,1995)と類似している。
 
キーワード:放散虫化石、赤石山地、四万十帯、池口川、微化石データベース
 
 
■歯根と歯冠の対応関係からみたアケボノゾウ臼歯の稜数について(予報) 小泉明裕  本文PDF(150KB)
Preliminary report of the ridge formula of Stegodon aurorae(Matsumoto) investigated from the relation between crown and root of teeth. Akihiro Koizumi
模式標本を含むアケボノゾウ臼歯の稜数を、歯冠と歯根との対応位置関係をふまえて再検討した。アケボノゾウにおいては、第2稜/第3稜間の真下に近心頬側根と遠心根との境目が位置することから、歯冠の近心部が咬耗しつくして不完全な臼歯でも、近心頬側根と遠心目との境目が保存されていれば、咬耗前の稜数が判定できる。こういう標本を含めたアケボノゾウの稜数は、歯種:上顎歯/下顎歯=P2:?/?、P3:6/7、P4:9/9、M1:9/9、M2:10/10、M3:11-13/12と推定される。
 
キーワード:アケボノゾウ、臼歯、稜式、前期更新世
 
 
■信州の植物フェノロジーの研究Ⅵ-ヌルデの開花と標高について- 小林正明  本文PDF(501KB)
Phenological studies of plants in Nagano Prefecture Ⅵ – On the efflorescence of Rhus javanica(Anacardiaceae) and the altitude. Masaaki Kobayashi
1.長野県内で1994年にヌルデRhus javanicaの開花フェノロジーを調べ、1割開花と標高との関係を明らかにした。2.最初の開花を記録したのは高森町不動滝(標高930m)で8月13日、もっとも遅いのは飯田市座光寺(550m)で9月10日であった。しかし天龍村(290m)で9月10日にも蕾を観察していることから最後は10月にも開花している個体があると予想された。3.蕾の大きさや開花率の変化から1割開花日を推定したところ、図5のようであった。その結果、標高の高いところが早く咲き、低いところは遅かった。図5から回帰線を求めると、開花前線は1日あたり14mずつ下がっていることが分かった。このように開花前線が標高の高いところから低いところへ移動する植物を「秋型の開花をする」と呼ぶことを提唱した。
 
キーワード:ヌルデ、開花、フェノロジー、標高、秋型植物
 
 
■長野県大鹿村と上村のコメツキムシ若干種について 大平仁夫  本文PDF(265KB)
Some elaterid-beetles on Oshika-mura and Kami-mura in Inadani Province of Nagano Prefecture, Honshu, Japan. Hitoo Ohira
長野県下伊那郡大鹿村と上村において、1996年7月20~24日に採集したコメツキムシ類を21種記録した。このうちの2種は長野県から未知で、12種は伊那谷から未記録と思われる種であった。
 
キーワード:甲虫目、コメツキムシ科、伊那谷、分布
 
 
■長野県伊那谷南部における12月のチョウの記録 井原道夫  本文PDF(289KB)
Some records of Butterflies at December in Inadani, Southern part of Nagano Prefecture. Michio Ihara
長野県伊那谷南部において、12月に活動しているチョウ類成虫について調べた。その結果、5科15種の活動を確認できた。伊那谷南部の気象が温暖な地域では、場所によって12月に入っても多くのチョウ類が活動していることが分かった。
 
キーワード:チョウ類、冬季生態、長野県、伊那谷南部