企画展準備日誌 その16 タカネマンテマその2
企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年
会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)
昨日の日誌で、南アルプス塩見岳で岡田邦松によって採集されたタカネマンテマが、牧野富太郎によりMelandrium apetalum (L.) Fenzl f. okadae Makinoの名で記載されたことを紹介しました。
最新のシノニミックリストでは、上記のとおりokadaeになっているのですが、古い文献をみるとokadaiと記されているものがあります。
そこで、牧野自身がどのような名前で記載したかを調べてみました。
Makino T.,1918. A contribution to the knowledge of the flora of Japan. Journal of Japanese Botany 2:5-8.
これを見ると牧野富太郎はokadaiという品種名を付けているのがわかります。
ではなぜokadaiがokadaeに変化したのでしょうか?
昆虫など動物では、男性の人名を種小名に付ける場合、語尾にiを付けます。
もしかして動物と植物でルールが違うのでは?と思い調べてみましたら、正解でした!
植物では、「人名の語尾がaの場合は、iではなくeをつけてaeとする」そうです。
ですので、牧野のつけたokadaiは、後人によってokadaeに訂正されたものと考えられます。
牧野の記載論文をみてもう一つ面白いことに気が付きました。
岡田邦松が採取した標本のデータは、「Mt. Shiomi (Kunimatsu Okada! July 28, 1914)」と記されています。
この時の様子を記した河野齢蔵の記録では7月26日、前澤政雄の記録では7月28日で、どちらが正しいのか判断がつかなかったのですが、牧野のデータと前澤の記録が合致することから、1914年7月28日が正しいと思われます。
些細なことでも調べていくと、いろいろ面白いことがわかってきますね。
しかし、重箱の隅を突くようなことばかりしていると、肝心の展示が出来上がりません。
スタートまでとうとう2週間を切ってしまいました。がんばらねば。
【今日の展示室】
昨日と変化なしです。
A0サイズのパネルを13枚打ち出しました。写真をデカく打ち出すとなかなか迫力があります。
四方圭一郎
ブログ 今日の美博