企画展準備日誌 その10 ホウオウシャジン

企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

 

鳳凰三山は、30年以上前、学生の頃に北沢峠から夜叉神峠まで歩いたことがありましたが、雨に降られてずぶ濡れになった記憶しか残っていません。
なので、いつか再訪して晴れた鳳凰三山を歩き、固有変種のホウオウシャジンを撮影してみたいと思っていました。

 

2020年はコロナ禍が始まった年で、多くの山小屋が休業を余儀なくされ、山によっては登山道も閉鎖されたりしていました。
そんな中、鳳凰三山の小屋は感染症予防対策を徹底して営業を続けておられテント場も使用できるとのことで、1泊2日で夜叉神峠から地蔵岳まで往復することにしました。

1日めは南御室小屋のテント場に泊まり、稜線を歩いたのは2日目でした。
快晴の朝、花崗岩が風化した登山道は砂浜のように白く輝き、初秋の空気の下、鬱々としたコロナ禍をすっかり忘れ、清々しい気分で歩くことができました。

ホウオウシャジンは、登山道沿いのあちこちに見られ、釣鐘のような紫色の花を花崗岩の割れ目からぶら下げていました。
南アルプスの他の山には分布していないのに、鳳凰三山ではもっともよく見かける花です。

ここには、ホウオウシャジンと並んでもう一つ有名な高山植物があります。
タカネビランジです。

タカネビランジは南アルプス各地に分布していますが、花の色はピンクから白まで地域によって異なります。
鳳凰三山のタカネビランジは濃いピンク色で、白い花崗岩によく映えます。

ホウオウシャジンが見頃の時期はタカネビランジには遅く終わった花や傷んだ花が多かったので、次はもう少し早い時期に訪れてみたいです。

四方圭一郎

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