企画展準備日誌 その7 キタダケソウ

企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

 

残雪の残る間ノ岳をバックに、キタダケソウの写真を撮ってみたいと思って北岳にでかけたのは2017年6月のこと。
満開のキタダケソウと最高の天候に恵まれて、もうこれ以上の条件の日には当たらないだろうなと思いながら撮影した1ショットが上の写真です。

この年の運は6月の北岳山行で使い尽くしてしまったようで、夏の高山蛾調査は毎日雨にたたられ、ヤマビルにたかられ、なかなかツラい日々でした。

僕がキタダケソウを始めて見たのは大学1年生の時です。
白根御池までの樹林帯の登りがすごくキツかったこと、稜線でライチョウのペアを見たこと、肩の小屋で甲斐犬が飼われていたこと、山頂付近で山岳写真家の白旗史朗さんを見かけたことなどが思い出に残っています。


▲左右がキタダケソウ、真ん中がハクサンイチゲ

稜線を歩くと、白い花がたくさん咲いていました。
「さすが北岳。キタダケソウがたくさん咲いている!」とはしゃぎながらで見ていたのは、ぜんぶハクサンイチゲでした。
このときは、無知な僕達に咲いている場所を教えてくれた親切な登山者がいたお陰で、なんとか本物のキタダケソウを見ることができました。

南アルプス最高峰の北岳は、日本屈指の花の山でもあります。
6月のキタダケソウから始まり、9月上旬まで高山植物たちが次々と花開いていきます。

企画展の準備でストレスフルな毎日ですが、職場の屋上から北岳を眺めるたびに、心は雪解けとともに間もなく咲き始める高山植物たちのところへ旅しています。

四方圭一郎

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