企画展準備日誌 その5 背負子
企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年
会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)
日本山岳会の創立メンバーである小島鳥水は、明治39年に発足した日本山岳会の会誌「山岳」第1巻1号「赤石山の記」の中で次のように書いています。
「不二山の十回登山よりも、赤石山の一回登山の、苦しきこと百倍なるを」。
赤石岳への登山は、富士山の1000倍も大変だと言っています。
近代登山の黎明期は、ちゃんとした地形図もなく、山麓で案内人と歩荷を雇って、道なき谷を遡り尾根を越え頂に至るような探検的登山であったことが、当時の登山記を読むとよくわかります。
美術博物館が保管する前澤淵月の資料の中に、明治45年に赤石岳大聖寺平付近で撮影された写真(トリミング)がありました。
手前の人物は菅笠を被り、胴乱(どうらん:植物採集をするためのブリキ製の箱)をはすかいに掛けています。
奥の二人は歩荷(人夫)で、背負子にくくりつけた大量の荷物を背負っています。
当時の記事を読むと、歩荷はひとり七貫八百目くらいを背負ったと書いてありました。
今の重さになおすと、29〜30kgくらいですね。
今回の企画展で展示するために、歩荷に使った背負子を借りました。
昭和時代のものと思いますが、なかなか年季の入った背負子です。
さて、どんなふうに展示しましょうかね。
企画展担当:四方圭一郎
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