企画展準備日誌 その4 サンプクリンドウ

企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

 

高山蛾と同じように、9年間の調査でたくさんの高山植物も撮影しました。
とりわけ、南アルプスの固有種や希少種は撮影しておきたくて、撮影を目的に初夏や秋にも山行を重ねました。

思い出深い種類はいろいろありますが、今回はサンプクリンドウを紹介します。

サンプクリンドウは、南アルプス中部にある三伏峠の名前を冠した小さなリンドウです。
1938年(昭和13年)に三伏峠で発見され、その名前が付きました。

私がこのリンドウに始めて出会ったのは、2018年9月の北岳でした。

台風が近づき時おり雨が降るような不安定な天候でしたが、自生地にたどり着いたころには雲の間から陽光がさし始め、たくさんのサンプクリンドウが出迎えてくれました。
他にもアカイシリンドウやヒメセンブリなどの珍リンドウたちが点々と咲いており、時間を忘れてシャッターを切りました。

その晩は山小屋に泊まり、目的の花に出会えた感動を味わいながら酒を酌むつもりだったのですが、山頂付近で出会った登山者から、台風の影響で登山口までのバスが明日以降計画運休するという話を聞いて、急遽予定を変更して下山することにしました。

登山口まで一気に駆け下りなんとかバスに間に合って、結局日帰りで飯田へ戻って来ることになってしまいました。

この台風は翌日四国に上陸し、近畿地方に大被害をもたらした、あの台風21号でした。
山小屋に泊まっていたら、大変なことになっていたかもしれません。

サンプクリンドウには、その後、塩見岳から間ノ岳への稜線や荒川岳でも出会いましたが、名前の由来となった三伏峠では見つけられていません。
三伏峠の草原の片隅で、いまでも人知れずこの花が咲いているといいなぁと思っています。

四方圭一郎

 

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