「南アルプス博物学の120年」企画展準備日誌 その2

企画展 高山植物と高山昆虫からたどる
南アルプス博物学の120年

会期:2025年6月7日(土)〜8月31日(日)

南アルプスの学術登山は1900年代から盛んになってきました。
長野県では1902年(明治35年)に信濃博物学会が立ち上がり、東京では1905年(明治39年)に日本山岳会が結成され、それぞれ雑誌を出版し始めます。

最初の頃の登山は探検の要素が強くて、案内人と歩荷を雇って草鞋履きで沢を遡り、道なき峰々を歩いていたようですが、その後の近代登山ブームによって多くの山域が踏査され、高山植物や高山チョウなどが次々と発見されていきました。

 

 

 

 

 

 

 

飯田市美術博物館には、上の写真のような大正6年8月5日に赤石岳で採集された高山植物の標本が保管されています。
普通のサイズのさく葉標本と異なり、葉書サイズで作成され、ラベルには科名種名が記されていることから、研究用に作成されたものではなく、教育用に作られたものではないかと思っています。

文献を調べてみると、師範学校を含む中等学校に博物標本をそろえるため、明治45年ごろから教員による標本収集が開始され、大正2年には県の予算化がなされたとされています。
少し時期はズレますが、この標本はそのような教育活動の一環で作られたのではないかと思います。

展覧会では、この標本も展示します。
ぜひ本物をみて、当時の博物学の雰囲気を感じてみてください。

企画展担当 四方圭一郎

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