【春草展示複製画】ミニ解説②《黒き猫》(未完成)

12月17日から、菱田春草記念室にて「落葉」から「黒き猫」へ―複製画で見る晩年の名画―を開催しています。今回は、明治43年の制作から未完成の1点を紹介します。

 
菱田春草《黒き猫》(未完成)
明治43年 飯田市美術博物館蔵

人物画の大作《雨中美人》を中断後、第4回文部省美術展覧会の出品を目指して描いた作品です。しかしこれも未完成に終わっています。友人の齋藤隆三宛の書簡では《雨中美人》と本作の失敗と、展覧会出品を諦めるつもりだという内容を伝えています。

背景にグラデーションを施してから猫を描いている、制作の様子が分かります。画面の上には、おそらく中断を決めた後に、濃淡のある墨で柏の葉の形や木の幹のごつごつ感の表現を試し描きしています。この中断を踏まえて再び挑戦したことで、名画《黒き猫》[重要文化財] が誕生しました。

菱田春草記念室 常設展示 「落葉」から「黒き猫」へ―複製画で見る晩年の名画―は2月5日まで。本展示ではこの未完成作品と、重要文化財作品の複製画の2点の黒き猫を並べて展示しております。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

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