【春草展示複製画】ミニ解説①《雨中美人》

12月17日から、菱田春草記念室にて「落葉」から「黒き猫」へ―複製画で見る晩年の名画―を開催しています。

眼病によって一度は失明の危機に陥ったものの、療養を経て快復した春草は、明治42年の第3回文部省美術展覧会に《落葉》を出品し、高い評価を得ます。その翌年には、第4回文部省美術展覧会に《黒き猫》を出品しました。

今回は、明治43年の制作から1点ご紹介します。


菱田春草《雨中美人》(未完成)明治43年 飯田市美術博物館蔵

第4回文部省美術展覧会の出品を目指して描いた、未完成の作品です。展覧会開催にあたって、岡倉天心が渡米の関係で審査委員を辞退したため、代わりに春草が任命されました。審査委員としての初めての出品作、春草は気合を入れて大画面の人物画に挑戦しました。

雨の景色を歩む女性たちを画題に決め、和傘をさした妻・千代をモデルに、様々な角度で丁寧に描きうつしたスケッチが数多く残っています。
入念な準備の末、屏風に着手しましたが、着物の色が気に入らなかったようで、淡墨の線描きとわずかな着彩のみで中断しています。

表情の見える女性は1人ですが、彼女たちの表情や話し声が伝わってきそうです。春草が目指した色彩や、自分が思う魅力的に感じるのはどのような色づかいか。想像をふくらませながらお楽しみください。

菱田春草記念室 常設展示 「落葉」から「黒き猫」へ―複製画で見る晩年の名画―は2月5日まで。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

ブログ