【春草展示第35期】ミニ解説④春草の参考資料

菱田春草記念室 第35期展示 墨の情趣-春草の水墨表現-を開催しています。今回は、春草の資料類から、春草が制作の参考資料としてみていたものを紹介します。

春草の資料類の中には、模写や写生、印刷物の切り抜きなどを貼りこみ、綴じた貼り交ぜ帳がいくつか残っています。古画模写、動植物写生、参考写真や、同時代の仲間たちの作品の部分図など。春草の制作のための準備や、関心を持っていたものなどを垣間見ることができます。


左:春草の貼り交ぜ帳 右:國華102号

貼り交ぜ帳にある、大きな山水図の切り抜きが貼ってあるページに注目。これは『國華』第102号(明治31年3月)掲載の雪舟落款《山水図》の切り抜きであることがほぼ確実となりました。春草が同時代の美術史研究の雑誌を読んでいた、ということが分かります。そして、これを典拠にしたと考えられる本制作も残っています。《高士望岳》(明治35年1月、広島県立美術館蔵)がその作品であると確実視されています。

朦朧体期の春草は、宋代院体画や漢画系の古典様式を典拠とする例が多くみられます。「西洋的の改良を加へん」としつつ、「日本美術の気韻は何処迄も之を存し置」くべし、とする師・岡倉天心の意向をかなり反映した結果といえます。

菱田春草記念室 常設展示 第35期 墨の情趣-春草の水墨表現-は7月24日まで。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

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