【美術】幻になるかもしれない展示 内容紹介3
幻になりそうだったコレクション展示「新時代の造形3-昭和・平成世代の日本画」は、本日より4日間の会期で公開できることになりました。当初の予定はゴルーデンウィーク期間を含めた37日間でしたので、かなりの短縮となります。それでも展示はしたものの一度も公開できなかったという事態はまぬがれました。少しホッとしています。
さて、最終回の今日は仲村進の作品についてご紹介します。仲村進は松尾の出身の日本画家です。国民学校高等科を卒業した後、満蒙開拓少年義勇軍に志願し旧満州で開拓に従事しました。太平洋戦争末期にソ連軍が開拓地に進駐したため退去を余儀なくされ、過酷な逃走の末、本土に帰還しました。戦後は郷里に帰って農事にいそしみながら日本画を描きました。
今回の展示では、仲村が画壇にデビューした当時の初期作品二点を展示しています。《郷愁》は、第23回新制作協会展に入選した作品です。仲村は高山辰雄の指導を受け日展で活躍した画家ですが、初期には創造美術を期限とする新制作協会日本画部へ出品していました。日展での仲村の重厚な作風とはかなり違い、色彩に富んだ軽やかなイメージの作品です。
一方の《陶工》は、第9回新日展に初入選した作品です。ここでは師の高山辰雄が展開した厚塗りの作風が見て取れます。日本画の顔料を立体的に厚く塗る技法は、戦後、日展を中心に流行しました。この作品には三人の人物が描かれていますが、実は同一人物です。モデルは仲村の友人の陶芸家・水野英男で、登り窯で作品を焼く時の異なった動作をひとつの画面で表現しています。寝ずの番をする窯焼きの長い時間が絵の中に流れています。
槇村洋介(美術担当)
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