▲目次へ戻る
■恵那山〜清内路峠2(富士見台〜恵那山)

■富士見台の岩塔

■富士見台でみられる不思議な地形

■神坂峠の遺跡

■岩屑で埋められた谷

■崩壊がすすむ姥ナギ

■天狗ナギと線状凹地

■山頂直下の水場と岩塊

■恵那山の広い山頂

 富士見台から恵那山にかけては、登山道が整備されているので、迷うことはない。ただ、前宮ルート分岐へ登り詰める急斜面は、すべりやすく歩きにくいところがある。

 恵那山へ登るには、神坂峠からの稜線コースの他に前宮ルート、黒井沢ルート、広河原ルートの4本の登山道があるが、ウェストンも登ったという前宮ルートが変化があって面白い。


▲富士見台−恵那山のマップ(カシミール3Dを利用)
 赤線は今回の歩行ルート(GPSトラック)。

富士見台の岩塔

 富士見台の緩やかな稜線上には背の低いササが生い茂っているが、ところどころ溶結凝灰岩が露出して背の低い岩塔となっている場所がある。岩塔の上には、神坂神社と書かれた石碑があったり、ケルンが積まれていたりする。

 溶結凝灰岩には、南東へ中程度に傾く節理が発達しているため、割れ方に規則性がある。また亀の甲状の割れ目が発達している岩もある。

 山頂付近から北西を向くと、神坂から坂下を通って付知方面へのびる地形変換線をみることができる。これは阿寺断層がつくった低断層崖だ。阿寺断層は坂下の段丘を切り、北東側を隆起させている。同様に、付知から下呂にかけても北東側が隆起して、高原となっている。

 阿寺断層は神坂付近で不明瞭となって、その延長は富士見台付近だ。阿寺断層は1586年の天正13年に活動し、広い範囲に山くずれなどを引き起こした。阿智村横川や清内路村桑畑沢では、そのときに崩れた埋もれ木が見つかっている。

▲岩塔の上につくられたケルン
▲富士見台からみた阿寺断層(↓)
▲戻る
▼次へ

富士見台でみられる不思議な地形

 萬岳荘へ下る分岐付近の稜線東側には、ササに覆われているが、地表が凸凹している緩やかな地形がある。とくに窪んだところで、凸凹が発達している。凹凸の激しいところでは、ササはマウンド状となっていて、マウンドの周囲はコケや草地のようになっている。

 この付近はかつて牧場として利用されていたことから、家畜の踏みつけによってササの根が切れて、このようなまだら状になったのかも知れない。あるいは、凍結融解作用が強く働き、土壌が下方へ移動するソリフラクションによってできたものかも知れない。

▲富士見台で見られるソリフラクション?
▲戻る
▼次へ

■神坂峠の遺跡

 神坂峠は東山道の難所として、万葉集の時代から知られていた。峠のすぐ北側の、標柱のある平坦地で昭和42〜43年に発掘したところ、勾玉・鏡・剣などの石造模造品、須恵器、土師器、鉄製品などが出土したという。石造模造品は、旅の安全を願って供えたもので、古代の祭祀遺跡とされている。

▲御坂峠の遺跡
▲戻る
▼次へ

■岩屑で埋められた谷

 神坂峠から西をみると、まるで氷食谷のようなU字谷が見える。谷の上部が急で、下部ほどゆるやかだ。これは、どうも膨大な量の岩塊が谷底を埋めている地形のようだ。

 谷底を覆っている岩塊は、冷たい空気の通り道となって、各所で風穴をつくっている。かつて冷蔵庫のない時代には、冷気がよく吹き出す風穴に、石を組んで壁をつくり屋根をかけて、ここに蚕種を保存していた。現在でも、森林管理局が保管する風穴が残っており、最近までここでは植林の苗が保存されていたという。風穴跡は、林道沿いでいくつも見ることができる。

 このような岩屑はすべて溶結凝灰岩でできている。地形から見て、神坂峠付近の稜線から供給されたものに違いない。地形図をみると、神坂峠付近は主稜線が東側へ湾曲していて、大きな崩壊跡のように見える。他にも南沢山から富士見台にかけての稜線西側斜面には、崩壊跡と思われるような馬蹄形の地形がいくつも見られる。これらは、阿寺断層や木曽山脈西縁断層による地震で崩れた可能性がある。

▲中津川から御坂峠へのぼる東山道の谷
▲風穴跡の石組み
▲戻る
▼次へ

■崩壊がすすむ姥ナギ

 鳥越峠と大判山との間にある大きな崩壊地が姥ナギだ。1/2.5万地形図をみると、かつての登山道は、稜線まで迫った崩壊地の頭を通っていたようだが、現在は東側をまいているので、危険はない。東側をまいている登山道は、かつての木馬道だ。

 姥ナギの下の方にも右岸側に大きな崩壊地がある。大檜駐車場からのびる林道が、ここまでできているが、途中に目通り7.2mというヒノキの巨木がある。

 

 

▲崩壊がすすむ姥ナギ
▲戻る
▼次へ

■天狗ナギと線状凹地

 天狗ナギも稜線まで迫る大きな崩壊地だ。稜線には、線状凹地が二段できている。崩壊の頭からのぞくと、すぐそばの岩塊の節理面が開口していて、今にも崩れそうで恐ろしい。この上部の尾根には線状凹地ができているので、尾根全体がいつ崩れてもおかしくないような状態だ。

 この岩石も、姥ナギ同様、溶結凝灰岩からできている。

▲天狗ナギと線状凹地
▲戻る
▼次へ

■山頂直下の水場と岩塊

 山頂小屋から黒井沢ルートを400mほど下ったところに水場がある。まわりは溶結凝灰岩の岩塊がごろごろしている。もう少し下って尾根までいくと、礫岩がでてくる。

 礫岩には溶結凝灰岩の他に、チャートや砂岩なども含まれている。これらは美濃帯の中古生層由来の礫だ。野熊の池から黒井沢にかけては、この中古生層が分布している。

▲山頂直下の水場
▲戻る
▼次へ

■恵那山の広い山頂

 恵那山の山頂は広くてなだらかであり、いったいどこが一番高いのか分かりづらい。三角点は一番南の方に設置されていて、ここには恵那山神社の奥宮本社もある。高さは2189.8mとされている。ここは、まわりの樹林にさえぎられて展望はよくない。

 1/2.5万地形図では、平成12年修正測量版になってはじめて、山頂小屋の北側に2191mの標高点が入った。ここが恵那山の一番標高の高い場所のようだ。国土地理院の日本の山岳標高一覧(1003山)でも、この数値が採用されている。

 小屋裏の岩塔の上からは東面の展望がよく、聖岳と上河内岳との間に、富士山を望むことができる。

▲恵那山の一等三角点
▲恵那山神社の奥宮本社
▲目次へ戻る