沖縄は太平洋戦争の敗戦により、アメリカが施政権を行使し、1952年(昭和27)に自治体琉球政府がおかれ、1972年(昭和47)米軍基地の存続など諸問題を残したまま日本に返還されたという特殊な事情を持つ島である。作者は2000年(平成12)七月に行われたサミットの機会を前にしてこの島の撮影行を試みている。
島は50年を越える米軍基地の存続によりすっかりアメリカ化され、物質文明の悪い面の象徴ともいえる廃車の山の光景からストーリーは始まっている。そして青空にたなびく星条旗、無造作に棄てられた基地の廃品と続き、かつて米軍の米兵を画面に入れこみ写し出している。その新鮮な色彩を使った看板がいっそう寂しさを表現している。
そんな植民地的な生活環境の波の中でも沖縄古来の伝統文化が守られており、その場面からストーリーは島の人々の暮らしへと移ってゆく。伝統と現代とのはざまで生活をする人びとの表情の影には、さまざまな問題が山積されており、静寂な光景の中にその苦悩が写し込まれている。
作者は以前に訪れた島の印象と、サミットを前にして訪ねた光景を心の中で対比しつつ画面化しており、アメリカの歓楽地的な色彩と沖縄本来の色彩とを共有させながら、独特のアングルで西暦2000年の沖縄をドキュメントしているところが評価された。
過去にこの賞を受賞した作品の傾向とはいささか異質なものであるが、審査員の協議の結果第3回の写真文化賞に「沖縄2000」田頭とみい氏の作品が選ばれた。
選考委員 田沼武能
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