岡本豊彦 「山月図」  絹本墨画淡彩 24.0×67.7p 軸装一幅
 岡本豊彦(1773〜1845)は、備前国(現岡山県)出身の江戸時代後期の画家で、京に出て松村呉春に師事し、呉春の弟松村景文とともに四条派の双璧として活躍した。写生に基づきながらも南画風を取り入れた穏やかな山水画を得意とし、近代へつながる新興画派の作風を展開した人物のひとりである。
 本図は、山端にかかる月の風情を描いた小品の山容図であるが、淡い墨色と霞様の余白、淡い彩色に浮き出された月の表現により、四条派らしい情感豊かな作品を描き出している。豊彦は飯田・下伊那地方で好まれた画家でもあったようで、当地ではその作品に出合う機会も多い、上品で優し気な作風は飯田の京風嗜好を反映している。